インダストリアルな美しさをもつ英国アンティークの直定規。
さりげない印象ながら、こだわりの細かさと職人技が光る定規。
中央の木部は寸法安定性が高いボックスウッド、両端のアイボリー部分は樹脂製と思われます。
片側はセンチ、もう片側はインチ表示。
水平面に置けば、かすかに中央がアーチ状に浮いています。
おそらく、これはわざと。
これを抑えることによって、しっかりと面に張り付き、なおかつ放した時に持ち上げやすい、というメリットがあります。
左側には「STANLEY LONDON」の文字がみられます。
1853年にWilliam Ford Robinson Stanleyによって創業された W.F.Stanley & Ltd。
ロンドン・Holbornを拠点として定規、コンパス、顕微鏡など光学機器を製造・販売していました。
1916年にNew Elthamへ拠点を移転。
第一次大戦、第二次大戦を通じて英国軍へ、そしてRMS Queen Maryなどの豪華客船へもコンパスを提供した実績をもつ英国屈指のメーカーでありました。
長く操業を続けましたが、1999年にはポンド高による輸出難、冷戦終了による軍の需要減などから残念ながら会社は解散。
現在は同社の名声を懐かしみ、多くのリプロダクションが生産されています。
さて、今回ご紹介する直定規。
リプロダクションとしては風格がありすぎる印象をうけました。
実際、スタンリー社のリプロダクションは望遠鏡やコンパスがほとんど。
ただの直定規をわざわざ作っても採算があわないような気がします。
そこで、右側には「R.A.F-C.I.U」の文字に注目。
この文字は単に使用する人、もしくは会社や商会のイニシアルの可能性もありますが、
もうすこし深く解釈をすすめてみました。
R.A.Fとは「Royal Air Force」(英国空軍)の略。
C.I.Uとは「Central Interpretation Unit」の略。
この「Central Interpretation Unit」とは1941年に英国空軍の「Photographic Interpretation Unit(PIU)」が移転し、名称を改めた組織。
1947年には「Joint Air Photographic Intelligence Centre UK (JAPIC (UK)」となり、現在まで続いています。この組織は一時期のみではありますが、MI4(秘密情報部の一組織)としての働きもあったようです。
以上の事柄、そしてスタンリー社が英国軍へと製品を提供していた事実を組み合わせれば、この1本の定規は英国空軍の「R.A.F」と情報部「C.I.U」とが同時に存在した一時期に、その組織用に特注されたもの、と考えることはあながち無茶なことではないかと思われます。
つまり、製造年代は1941年から1947年。
この定規自体がもつ経年の印象ともぴったりな気がいたします。
英国の老舗メーカーが祖国を護る人々のために作ったであろうひとつのツール。
普遍的でありながらどこか感動をよぶアンティーク・ステーショナリーです。
◆England
◆W.F.Stanley & Ltd
◆推定製造年代:1941-1947年
◆素材:ボックスウッド・樹脂
◆サイズ:長さ約31.2cm 幅約3.2cm
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A