フランス・アンティーク、クロスをくわえた鳩のフォルムをしたブーケ・ホルダー。
イングランド中部の小さなアンティーク・フェア。
フランスから来たというお髭の親爺殿から買い付けたのが、今回ご紹介する小さな鳩です。
精密なつくりに心魅かれ、用途を尋ねると、親爺殿は得意気に答えました。
「それはブーケ・ホルダーだよ。フランスの古い物。1910年くらいかな。いい物だよ」
19世紀のアンティーク・アイテムで、ブーケ・ホルダー(もしくはポジー・ホルダー)はよくみかけるもののひとつ。
多くはガラス瓶などが仕込まれた凝ったホルダーで、お花の切り口を水につけて、長くもたせることが出来るように考えられているものが多く残っているようです。
ただ、シンプルなシルバーや金属のリング状のホルダーも時折みかけることがあります。日々の暮らしの中では、そんなものの方がひょっとして一般的だったのかもしれません。
さて、用途はわかりました。
でも、モチーフとしてどんな意味があるのでしょうか。
まず鳩のイメージは、旧約聖書のノアの方舟にオリーブの葉をノアに持って帰ってくる描写から、平和の象徴。
そして「ヨハネによる福音書」より 洗礼者ヨハネの以下の言葉があります。
「私は霊が鳩のように天から降って、この方イエスの上にとどまるのを見た」
このことからも、鳩は三位一体の第三の位格、聖霊なる神の象徴であることがわかります。
そんな鳩がくわえるのは、ちいさな十字架。
鳩が十字架をくわえる様は、例えばフランスのポン=サン=テスプリの紋章として描かれることもある、定番の表現でもあるようです。
また、鳩がとまっている木の幹には以下の文字がみられます。
M. Gelas
DEPOSE(おそらく)
「DEPOSE」とは、フランスやイタリアにおいての登録商標の意味。
フランスでは1860年代くらいから始まった表示といわれています。
そして「M. Gelas」とは、おそらく「Mount Gelas」の略。
フランスとイタリアの国境、アルプス山脈にある「Cime du Gelas/ジェラ山/3,143 m」の事であると思われます。
ジェラ山の麓の町のひとつにサン=マルタン=ヴェジュビがあります。
ベネディクト会修道院が880年頃に旅人のための避難所として建てたという起源をもつ歴史ある礼拝堂を有する、古い巡礼地。
今回ご紹介する小さな鳩は、その地のお土産ものだったのかもしれません。
古い巡礼地の記念の品として、聖霊の鳩のブーケ・ホルダーはうってつけだったのではないでしょうか。
かつてどんな人が、この鳩で花を束ねたのでしょう。
レディが自分のために?
紳士がだれか大切な人のために?
こんなホルダーで束ねられた花束を贈られたら、なにか大切な大きなものをもらったような、特別な気持ちになるのは間違いなさそうです。
100年前のフランスから来た、聖なる鳩。
貴方も大切な誰かのために、鳩の力を借りてみてはいかがでしょうか。
◆France
◆推定製造年代:c.1910年代頃
◆素材:ブロンズ
◆サイズ:幅約4.5cm 奥行き約7.5cm 高さ約3.7cm
◆重量:74g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*鳩は木の幹の上にとまっているため、平らなところに置くと、どちらかの羽が下につくまで、ころんと転がります。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A