英国アンティーク、スターリングシルバーのカラー付きヴィクトリア時代のステッキ。
今回ご紹介するステッキは、なかなかのこだわり要素が詰まった逸品。
まず、オーバルを取り囲む優雅な唐草文様が施されたカラーには、ホールマークがみられます。
左にライオン、中央にあるのは顔がつぶれてしまっておりますが、ジャガーのマーク。一番右側も若干読みづらいですが、シールドシェイプに大文字の「T」と思われます。
これは、1894年、ロンドンのアセイオフィスで認可を受けたスターリングシルバーであるという印。
左上の「W(おそらく) D」はメーカーズマーク。
1768年創業のWilliam Downesというシルバースミスがロンドンにあったようですが、このステッキがそこのものかどうかは確証が得られませんでした。
グリップは色合いや質感からして水牛の角と思われます。
飴色がかった琥珀のような色合いに、うす黒い縞が入った独特の表情は見飽きることがありません。
さて、カラーにスターリングシルバー、グリップに水牛の角を持つ、ヴィクトリア時代の高級ステッキ。
シャフトはどうみても、竹。特に先端部分をみると、微妙な斑模様があることに気づきます。
このような斑模様が出る竹としては、日本においては「虎竹」もしくは「虎斑竹」とよばれるものがあります。
「虎斑竹」は、岡山県の夜叉竹/ヤシャダケの一部、高知県の淡竹/ハチクの一部がそれにあたり、国の天然記念物にも指定されている貴重な竹です。
表面に独特の斑模様がでるこの竹は、幹に付着した寄生菌の作用によるとの説もありますが、現在のところ詳細は不明。
また、夜叉竹はかなり細身であることから、ステッキに使用できる太さとしては、日本では高知県の淡竹の虎斑竹しかないと思われます。
世界において竹の生息域はかなり広く、日本、中国などの東アジア、インドやタイなどの東南アジア、そしてアフリカやアメリカ大陸の一部まで幅広く、
世界中に1300種類、日本国内でも600種を越える竹があるといわれております。
ただ、英国を含むヨーロッパには自生しておりません。
「木でもなく、草でもない。中は空洞で節があり、強くて軽い・・・これはいったいなんだろう!?」
初めて竹をみた英国の人たちはこんなふうに思ったのではないでしょうか。
恐らくは中国、インドなどの東方貿易を通じて英国にはいってきた竹。
18世紀にはじまる東洋趣味のひとつの代表格として、竹が珍重されたのは想像に難くありません。
今回ご紹介するステッキの竹が、果たして「日本の土佐藩からきた虎斑竹」であったのかどうかは、断言が出来かねますが、可能性のひとつとしてゼロではないと思います。
ヴィクトリア後期、1894年はまさに大英帝国の爛熟期であり、世紀末でありました。
シャーロック・ホームズが活躍し、オスカー・ワイルドがサロメを発表(正確にはこの年は英語版の発売)。
オーブリー・ビアズリーがイエロー・ブックを創刊し、ウィリアム・モリスはケルムスコット・プレスを創業してチョーサー著作集を発刊しようとしていました。
世界中から集まった材や文化が英国ロンドンに集まり、発酵するように独特の花を咲かせていた様が目に浮かびます。
そんな時代につくられた、1本のステッキ。
珍しい竹を使用し、こだわりのグリップと銀のカラーを選んだ紳士は、さぞ粋なご仁だったのではないでしょうか。
製作から120年余り。
様々な歴史をみてきた数奇なステッキは、次のオーナーを求めております。
貴方がその人であることを願ってやみません。
◆England
◆London
◆推定製造年代:c.1894年
◆素材:竹、おそらく水牛の角、スターリングシルバー、真鍮(石突)
◆サイズ:長さ約89.2cm グリップ奥行き約10cm
◆重量:148g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色や歪み等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*グリップは力を入れれば引き抜くことができそうです。シャフトのつなぎは栓のようになっておりますので、もし緩んだ場合はグリップ付け根部分(シャフトの真上)をぐっと押し込むようにしていただければ安定致します。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A