英国の大きなアンティークセンターで手に入れた、額入り版画。
一見オリジナル水彩画のようですが、よくみれば細い細い版画の線に、手彩色で色をのせているのがわかります。
タイトルは「THE CHURCH OF St LAWRENCE/聖ローレンス教会」。
オランダ、ロッテルダムに1449年から1525年にかけて建設された後期ゴシック様式の教会で、第二次大戦時1940年の爆撃で被害を受けましたが、1952年ロッテルダムの市民により復元された歴史をもちます。
調べてみると、この版画はある本の挿絵として作られたものであることがわかりました。
その本は1834年発刊「The Pilgrims of the Rhine/ラインの巡礼者」。
著者は初代リットン公爵であるエドワード・ブルワー＝リットン（1803-1873）。
小説「ポンペイ最後の日/The Last Days of Pompeii」が代表作として知られ、戯曲「リシュリュー/Richelieu; Or the Conspiracy」に登場する文言「ペンは剣よりも強し/The pen is mightier than the sword」で有名です。
「ラインの巡礼者」62ページに、この版画が掲載されており、他にも多くの挿絵がありますので、かなりな豪華本だったと推測いたします。
ちなみに「THE CHURCH OF St LAWRENCE/聖ローレンス教会」の原画はスコットランドのアーティストD.Roberts（David Roberts）1796-1864、版画の彫刻士はロンドン生まれのJ.Carter(James Carter)1798-1855となっており、確かにその名前を版画の下部左右に確認することが出来ます。
背面にはシールが貼られており、以下の文字がみられます。
This engraving
is guaranteed
to be 100 years old.
J.Shotton
89 Elvet Bridge
Durham
「この版画は100年（以上）古いものであることを保証します。」
という文言であり、「J.Shotton」はこれを販売していたお店だと思われます。
調べてみると確かに過去にはイングランドのダーハムにその名前の本屋があったようですが、現在は無くなってしまっているようでした。
このようなシールは、英国において古い版画や新聞などを販売する際にしばしば貼られているのをみることができます。
私が見た限りでは、100年前でも150年前でもひっくるめて「to be 100 years old.」とされていて、とにかく古いオリジナルであることを言いたいのかと思います。
このフレームの販売元「J.Shotton」の主業が本屋だったこと、もともとはこの版画は本の挿絵としてつくられたこと、を考えあわせれば、おそらく1834年発刊の「ラインの巡礼者」がだいぶ本として傷んでしまったことから、挿絵部分だけ抜き出し、彩色を施してフレーミング・販売をしたのではないか、と推測いたします。
版画の折れ目も、本が傷んだ際についてしまったものかもしれません。フレーミングされたのは額と背面の様子から見て、それほど古くはなく、とはいっても最近では無い、1950年代頃かと思います。
フレームは木製。濃いめの木肌、内側に金色の縁取りが施されているシンプルかつクラシカルなデザインです。
表面にはめ込まれているのは、一見ガラスのようにみえますが、手触りと重量からおそらくアクリルでしょう。
全体の大きさはA4サイズ（29.7×21cm)よりもひとまわり大きめ。
存在感があり、なおかつそれほど場所をとらない、頃合いのサイズかと思います。
今もなお運河沿いにたたずむ聖ローレンス教会。
でも現在では多くの近代的な建造物に囲まれ、この絵の雰囲気とは大きく異なっています。
在りし日の教会、そしてロッテルダムの運河の賑わいを描いた19世紀ジョージアンの版画。
貴方のお部屋に、遥かなロッテルダムを望む窓よろしく、掛けてみてはいかがでしょうか。
◆England
◆推定製造年代:版画c.1834年頃 フレーム：1950年代頃
◆素材：紙・木・樹脂
◆サイズ：幅約30cm 高さ約27.4cm 厚み約1.8cm+金具
◆重量:569g
◆在庫数：1点のみ
【NOTE】
＊古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、版画には折れ目がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
＊背面の額装用テープは一部に剥がれがみられます。正面からは見えません。今のところ額装は安定しています。
＊画像の備品は付属しません。
＊上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d＋A
