Yamatogumiによるオープンワークのタバコボックス。
英国のマーケットで手に入れたずしりと重い小箱。
ディーラーによれば、銀メッキ仕上げにローズウッドの内張り、製造は1950年代頃という話。
底面に「Y」のアルファベットが組み込まれたヨットのようなマークと、パテントナンバーがありますが、メーカー名はわからない、とのことでした。
多少の傷みはあるものの、どこかオリエンタルな風情としっかりした作りに魅了され、手に入れてしまいました。
さて、どこのメーカーだろう・・・。
探すうちに、シルバーのホールマークを調べるときに頼りにしている英国サイトで、貴重な情報が掲載されていました。
「Chinese Export Silver & Far East Trade Information」
「中国と極東のシルバー情報」という掲示板に、ヨットのマークについて詳しく書いていらっしゃる方がいたのです。
よろしければご確認ください。
www.925-1000.com
Hallmarks Database and Silver Research
こちらの頁の中ほどです。
https://www.925-1000.com/forum/viewtopic.php?f=38&t=24259&p=113181&hilit=Yamatogumi#p113181
これによれば、ヨットのマークは「Yamatogumi」のもの。そう、日本製です。
この掲示板に書かれた「David Ross」氏による「Yamatogumi」の説明は以下の通りです。
(拙い翻訳で申し訳ありません。)
1910年に伊藤政治郎により、墨田区向島に伊藤メッキ工場が設立され、1920年代前半に本庄へ移転。(おそらく1923年の地震により*)
このころから合資会社大和組金属制作所として、第二次大戦以前に三越と取引をするようになった。
1940年までには政府による金属製品の統制により完全に製品は作らなくなった。
1949年、伊藤は輸出アンチモニー工業共同組合の設立者のひとりとなり、
この時から、会社は Yamatogumi Corporation (株式会社ヤマトグミ)として知られるようになった。
*関東大震災のこと
出典は「輸出アンチモニー工業の歩み」という専門誌である、という注釈がついています。
これは当然日本語で書かれている日本の本です。現在は国会図書館にはあるようですが、一般にでまわるような本ではないと思われます。
いったいこの「David Ross」氏は、どんな人物なのでしょうか・・・。
私も伊藤メッキ工場や株式会社ヤマトグミについて調べてみましたが、ネット上ではどうしても詳細をみつけることはできませんでした。
それでも、ヨットのマーク、そして「Yamatogumi」と記された金属製品、例えば小箱やデスクセットなどが、ヨーロッパ及びアメリカのアンティーク、ヴィンテージ市場にて散見されます。
時にブロンズ仕上げ、時に銀メッキで、細かな意匠が施された美しい品物です。
今回ご紹介する小箱(タバコボックス)も、オープンワークに下地のローズウッドが映える、手の込んだ作品。
モチーフは見事な枝ぶりの桜と小鳥たち。
オリエンタルを感じるのは当然、ということでありました・・・。
現ノリタケが、ノリタケとなる遥か前、1870年に貿易商社「森村組」を立ち上げたのに倣うように、伊藤政治郎も自らの金属製品を海外に輸出するために「Yamatogumi」と名付けたのかもしれません。
日本の戦後を支えた、職人の技と商人の気概。
ずしりと重い小箱から、そんな想いを感じずにはいられない、ヴィンテージの佳品。
お傍に置いて、桜の枝で戯れる小鳥たちを、そっと愛でてみてはいかがでしょうか。
◆England買付/日本製
◆Yamatogumi
◆推定製造年代:c.1950年代頃
◆素材:金属(おそらく銀メッキ)、ローズウッド(紫檀)
◆サイズ(外寸):約15.7×10cm 高さ約6.3cm
◆サイズ(内寸):約14.6×8.7cm 高さ約4cm
◆重量:725g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、歪みや変色、一部に亀裂などがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*蓋の開閉に問題はございません。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d+A