英国アンティーク、英国軍キットバッグ用のパドロック付きDリング。
キットバッグ/kit-bagとは、軍人(もしくは旅行者)が使う雑嚢のこと。英国では「kit-bag」、アメリカでは「duffel(duffle)bag」と呼ばれることが多いようです。
明確な規格があるわけではないようですが、旅行鞄のようにきちんとは出来ておらず、ざっくりとした造りで大きくできており、なんでも詰め込んでぎゅっと閉じる・・・そんなイメージの袋上の物、と思っていただければよろしいかと思います。
英国軍においては基本はキャンバス地でできた円筒形のもので、上部は紐で綴じるようになっており、さらに「Dリング」と南京錠を使って上部をロックします。
前線に行く兵士は身の回りの物をこれに仕舞いこみ、彼らが帰還するまで倉庫等に保管する・・・そんな使われ方をしておりました。
当時流行した歌になぞらえた絵葉書がありますので、ご紹介しておきます。
満面の笑顔の彼が持っているのがキットバッグ。そしてバッグの口をぎゅっと閉じているのがDリングです。
Postcard“Witty” Series No. 343
c.1916
このDリングは、当店では以前2点ほどご紹介したことがあります。ただ、その時はDリングのみで、パドロック(南京錠)は付属していませんでした。
今回ご紹介するDリングは、オリジナルと思われるパドロック付き。時代はWW1=第一次大戦頃のお品物と思われます。
Dリング本体は見た目と名前そのままの、アルファベットの「D」型。直線の端部に開いた穴を、もう片方の先に差し込む。ただそれだけですが、穴と棒の太さがちょうどよく、気持ちよくきゅっと納まります。(もちろん引っ張ればとれてしまうのですが)そしてオリジナルのパドロックはやはり真鍮製で、ぐるりと「GREEK KEY」の文様が刻まれています。
この「GREEK KEY=ギリシアの鍵」文様は文字通り古代ギリシアを源とする古くからある文様ですが、これを見た日本人は、中華料理店を連想する人が多いのではないでしょうか。
余談ではありますが、実はかなり前にこの文様の事を、英国人のディーラーに「中華料理店のボウルのパターンみたい」と言ったら、本気で怖い顔をされ、いかのこの文様に歴史があるのか、を説教されたことを覚えています。物を知らずに不用意なことを言ってはいけない、と心から反省しました。
その歴史あるGREEK KEYの文様が施されたパドロックは、あっさりした鍵で開閉可能。裏面には「MADE IN ENGLAND」「PATENT PENDING」と刻まれています。
「PATENT PENDING」という表記は始めて見ましたが、おそらく戦時中の為、パテント(意匠登録)は保留でとりあえず使う、ということだったのかもしれません。
機能と形状が一体となったミリタリーならではの機能美はひたすらシンプル、だからこそ強い美しさに満ちています。
このDリングを閉じ、パドロックで閉めて、小さな鍵を首に掛けるるとき、兵士はどんな思いだったのでしょうか。
当時流行った歌の一節。
「Pack up your troubles in your old kit-bag. Smile, boys, that’s the style.....」
「おまえの厄介事は古いキットバッグに詰め込んじまえ。笑え、おまえたち、それがカッコいいのさ」(訳は意訳です)
何度も「Smile」が繰り返されるその歌を口ずさみながら、いろんな想いをキットバッグに詰め込んでいたのでしょうか。
そんな背景を纏って、貴方のお手元でご活用いただくのを待っているDリング。オリジナルのパドロック付きは希少です。
この機会にぜひ手に入れてみてください。
◆England
◆推定製造年代:c.1910-20年代頃
◆素材:金属(おそらく真鍮)
◆本体サイズ:約12×8.1cm
◆パドロックサイズ:高さ約4.3cm 円形部分直径約3.1cm 厚み約0.7cm
◆総重量:102g
◆在庫数:1点(Dリング+パドロック)のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、歪み等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*パドロックは問題なく開閉します。
*画像の備品は付属しません。
*発送の際はパドロックはリングから外した状態で梱包いたします。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A