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Wednesday

ヴィクトリア朝時代の郵便革命が生んだ振り子のはかり / Antique Cased Pendulum Postal Letter Balance

 英国アンティーク、ケース入振り子式レターバランス。
























愛嬌のあるフォルムに惹かれて、英国のアンティークマーケットで手に入れた「秤」をご紹介します。



例えて表現するなら、「水のしずく/雫」のような「おばけのイラスト」のような、なんとも可愛らしい有機的な形状をしていますが、これはれっきとした秤で、主に、手紙など軽めの郵便物用の秤として特許を取得した、振り子式の「レターバランス/Pendulum Letter Balance」です。



使い方を簡単にご説明いたしましょう。


まず、先のほうに取り付けられた座金/Washer を、親指と人差し指で挟んで持つか、固定された丸棒かフックなどに引っ掛けバランスをとります。


次に、先端にぶら下がったΩ(オメガ/オーム)の形をした金具に、葉書や封筒を差し込むか、小さな小包などを引っ掛けると、座金部分の金具を支点に、数字などが刻まれた円盤部分が持ち上がり、計量が可能となります。これは、てこの原理を利用した「天秤ばかり」の基本法則と同じですが、分銅の代わりに、円盤の中心に固定された指針/Pointer が重量を示します。


動画をアップいたしましたのでご確認ください。







クロムメッキ加工された真鍮の指針/Pointer は、中心軸上で常に真上を指すようにバランスされています。対象物を吊り下げ、てこの原理でせり上がった円盤が、どの高さで止まっても、自動的に指針は真上を指すので、その時に真上に来る数値が対象物の重量となるよう、円盤の数値は計算されて刻まれています。


単純な原理でありながら、これらの組み合わせとバランスにはしっかりとした理由と根拠が詰まっていると思うと、このユニークなかたちにもより愛着が湧いてくるのではないでしょうか。



さて、このレターバランスですが、はたして正しく計量できるのか確認しましたところ、デジタルはかりのように瞬時に精密な数値は出ませんが、概ね正しいです。

ただし、刻まれてる数値はグラム/g単位ではありませんので、把握するには少々計算が面倒と言わざるを得ません。


まず、円盤の外側に刻まれた「OZ」と8までの数字は、計量の単位となるオンス/ounce、 内側の「D」と1から3までの数字は、当時の重量に対応する料金で、英国の下位通貨単位のペニー/Penny(複数: Pence/ペンス)となります。ペンスの当時の略号は「d.」で、古代ローマの小額の銀貨であった、ラテン語の「デナリウス/denarius」に由来します。


通貨の単位はともかく、重さの単位は万国共通に改めてもらいたいものですが、せっかく正常に動作する秤なので、ご興味があれば、少し説明にお付き合いください。


重さについて、まず、1pound/ポンド(453.592g)=16ounce/オンス が先にあって、1oz(オンス)=28.3495g となります。なぜ10進法ではないのかなども含め、数字が頭に入りずらいですが、この際小数点以下は切り捨てて、1oz=28g と割り切って覚えてしまった方がよさそうです。最大は、8oz=224g まで計量可能です。



金額については参考までに、このレターバランスの推定製造年代の貨幣価値からの推測となりますが、19世紀後半の英国、1ポンド=約20000円との想定を基に、当時は1ポンド=240pence/ペンスなので、1penny/ペニー=約83円となります。


現在の日本郵便の定形郵便物は、50g以内は94円です。

このスケールでは、2oz以内は1+1/2pence。換算すると、56g以内は約125円となります。 これを、安いとみるか、高いとみるか、評価はさまざまですが、着払いの高額な郵便料金を改革し、1840年、後に全世界のスタンダードとなる郵便切手を発案、料金前納制で全国どこへ出しても均一の低料金とする新しい郵便制度を生み出した英国ならではの、画期的な料金システムとそのツールは、恐らく当時の庶民に歓迎されたことと想像します。


この英国の郵便サービスの革命によって、今日、手紙は世界中のどこへでもとても安く送ることができます。それは、当時の人々にとっても革新的なことで、郵便物の重さに応じて切手を貼れば、簡単に送れるようになったことから、このように便利に量れるレターバランスの需要が自宅や職場で高まったと思われます。



以上、長々と説明致しましたが、あくまで郵便切手料金を確認するためのものなので、正確な重さを知るというよりは、それぞれの切手毎に定められた許容重量に対し、郵便物がどこの範囲になるかをざっくり見て即断できることが、このレターバランスに求められる利便性といえます。



専用ケースの表面は、シボ加工されたチョコレートブラウン色の素材で覆われ、内部は濃紺のベルベットの内張りが施されています。経年によって、角や金具周りなどに剥がれが見受けられますが、蓋の開閉に支障はなく、留め具もしっかり機能しています。



そのケースの中で守られてきたレターバランスは、真鍮の輝きも褪せることなく、動作も含めてとても良いコンディションです。



150年前の英国人が、より手軽に量れるツールを求めて、たどり着いた究極シンプルなレターバランス。

そんな、英国人的に、とても「Lovely」(素敵な)なツールを、是非貴方のコレクションに加えられてはいかがでしょうか。




◆England

◆推定製造年:c.1870年代頃

◆素材:真鍮、金属

◆本体サイズ:幅約12.5cm 奥行約6.6㎝ 

◆ケースサイズ:幅約13.4cm 奥行約7.6㎝ 厚さ約2.0cm

◆重量: 58g / 113g(ケース込み)

◆在庫数:1点のみ(ケース付)



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に微細な傷や汚れ、金属部の経年変化等がみられますが、動作は正常で、とても良い状態です。

*ケース表面に数ヶ所の剥がれや摩耗がありますが、蓋の開閉は問題なく、留め具もしっかり機能しています。

*詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。



アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A