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Friday

シティ・オブ・ロンドンのトビー/ Antique Crested China Tobby Jug "CITY OF LONDON"

 英国アンティーク、クレステッドチャイナのトビージャグ。















英国のアンティークマーケットで手に入れたトビージャグ。


高さ9cm弱の小さな陶器は、男性の形を模しており、まあるいお腹部分に紋章が配されております。


この陶器を説明するためのキーワードは3つ。

トビージャグ、クレステッドチャイナ、そしてシティ・オブ・ロンドン。




まずはトビージャグからご説明いたしましょう。


トビー・ジャグの由来は18世紀に遡ります。もともとはビール(もしくはエール)ジャグで、座って飲む男性の姿をかたどっており、三折り帽とフロックコート、パイプとなみなみとビールが入ったマグをもっている、というのが、お定まりのスタイル。

名前の由来は諸説あります。18世紀のヨークシャーで、2000ガロン(1ガロン約4.5リットルとすると9000リットル!!?)ものエールを飲み干したといわれるToby Fillpot(またはPhilpot)をモデルとしたというものがひとつ。他には、シェークスピアの12夜/Twelfth Nightにでてくる大酒のみのサー・トビー・ベルチ/Sir Toby Belchからの名前、という説もございます。

どちらにしても、モデルは大酒のみ。

18世紀ころから焼き物が盛んだったスタッフォードシャーで作られるようになり、とても人気となりました。もともとはビールを飲むジョッキだったらしいのですが、実用と言うよりは装飾的なものであるため、小さなものも作られるようになり、ミルクピッチャーや、ディスプレイ用のセットなどへと広がっていったものと思われます。

その由来があるせいか、顔だけをかたどった、トビーではない、他の人物のものも「トビー・ジャグ」とよばれます。ロイヤルドルトンやベスウィックなどの窯元も多くのトビージャグを生産してきました。文豪チャールズ・ディケンズの登場人物を揃えたディケンズ・シリーズのトビー・ジャグなどは、コレクターの醍醐味ともいえるでしょう。



次にクレステッドチャイナ。


「Crested China/クレステッドチャイナ」とは、各地の紋章がついている小さな陶器のことをいいます。主にヴィクトリア時代後期から1930年代頃までに多く作られました。産地は英国であったり、ヨーロッパの他国であったりしており、窯元の名前があるものもありますが、無銘のものも多くあります。

ヴィクトリア時代、英国では鉄道網が発達し、一般庶民でも旅行を楽しむことができるようになりました。そして、旅行に行った先で欲しくなるものは、お土産。沢山の物を飾り付けるヴィクトリアンの室内装飾において、お土産の小物はまさにうってつけのアイテムだったことでしょう。

そして、庶民が旅行に行けるようになった、といっても、まだまだいけない人は沢山いたでしょうから、行った先が一目でわかるようなものであれば、家に来たゲストにさりげなく自慢ができるというもの。そんな理由から、小さくて持ち運びが容易、そしてご当地の紋章が描かれているクレステッドチャイナは、たいへんな流行となりました。


最後に、シティ・オブ・ロンドン。


トビージャグのお腹に配された、2頭のドラゴンが盾を囲んだ「シティ・オブ・ロンドン」の紋章。モットーは「DOMINE DIRIGE NOS/主よ我らを導き給え」となっています。


ロンドンの中心地というべき「シティ・オブ・ロンドン」。もともとはローマ人により、テムズ川沿い"ロンディニウム"として築かれました。ローマ人は都市を安全に保つため壁を作り、それはやがて英国の金融機関の中心となってゆきます。ローマ人が紀元前440年頃に英国を去った後も、ロンディニウムは他国との取引を続けていました。こうしてロンディニウムはヨーロッパで最も権力のある都市の1つとなったのです。

1066年ウィリアム1世がイングランド王となった際に彼はロンドンの力を考慮し、彼らがウィリアムを王として権力を認めた場合、ロンドンを存続させるという約束を交わします。やがてロンドンの周囲には町が広がり、隣接して「ウェストミンスター」と呼ばれる政府機関をもつ新しい都市も造られました。

月日がたち、壁がほぼなくなっても、「シティ・オブ・ロンドン」には専属の警察官が存在し、境界にはドラゴンの銅像が立ち、英国の王(女王)が入るためには、ロンドン市長の許可が必要であるといいます。大英帝国のなかにありつつも、独自の文化と力を誇る場所が「シティ・オブ・ロンドン」であるといえるでしょう。



ちょっといかめしい顔つきのトビーには、英国アンティークならではの魅力が詰まっています。

お手元で由来と歴史をなぞりつつ、頭頂に花でも活けてあげてはいかがでしょうか。



◆England

◆推定製造年代:c.1900-1930年代頃

◆素材:陶器

◆サイズ:幅約5.2cm 奥行き約6.8cm 高さ約8.8cm

◆重量:66g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、金彩の剥がれ、染料のトビ等がみられます。

*ワレや欠けはございません。詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A