ドイツヴィンテージ、マーチングコンパス。
古いコンパスは世界中にコレクターが多く、特にミリタリー/アーミーコンパスは人気で、リプロダクションでもその完成度は高く本格的ですが、やはりオリジナルは別格です。
今回は、ドイツ国防軍(Wehrmacht)が第二次世界大戦時に使用していたマーチングコンパスのご紹介です。
このタイプの初期モデルは、ケース・蓋ともに真鍮で作られていましたが、第二次世界大戦中の材料不足のために、ケース、蓋はそれぞれニッケル、アルミニウムに変更となり、さらにその後本体がベークライトとなったタイプとなります。蓋裏は前モデルには単体で付属していたミラーは蓋裏に固定式となり、より簡易化された印象。方向の見方としてはスリットから矢印を見ながら合わせ、カバーを半分閉じた状態にするとミラーに磁針が写り対象物と方位を同時に見ることができます。
内部構造としてはベゼルリングは回転式になっているので(rotating bezel ring)、ベゼルリングのギザギザに2本の指を添えて容易に回すことができ、中の方位や数字の書かれた目盛り部分のみを回転させ、地図上の南北ラインに合わせるなどして活用します。コンパス底部には5cmまで測れる定規がついており、地図を読む時に利用していたと思われます。
東がEではなくO(ドイツ語の東=OST)になっているのもドイツならでは。また本体前面には穴が2つ開いており、ここに紐などを通して使っていました。裏側は軽量化の為にだいぶ本体裏に凹みがあります。このために欠けたりしてしまうものも多かったようですが、このお品物には欠けはなく、良い状態となっています。
そして印象的なのがコンパスカバーの「A」の文字。実は同タイプでもこの文字があるものと無い物が存在します。
1944年に、ドイツ国防軍はコンパスカバーに大きな「A」のステンシル文字を作成し、時計回りの区分を指定し始めました。「A」のない 1944年以前のコンパスには、反時計回りの目盛があり、方位角は対象物(戦場では攻撃目標)の方向と距離を測量する際に欠かせないデータであることから、ドイツ国防軍はこの「A」タイプを普及させ、測定方法の統一を図ったと思われます。以上の事から「A」は「Azimut(方位角)」の頭文字であると考えられています。
そして本体裏には「clk」のロゴ。これはドイツ、ヘッセン州にの「カッセル/Kassel」に現存する1767年創業「ブライトハウプト&ソン/ F.W.Breithaupt & Sohn」のマークであるとされています。
産業界や軍隊に多くの測定機器を提供してきた長い伝統をもつ、ドイツ最古の精密測定機器メーカーで、1945年までドイツ国防軍へマーチングコンパスを納入していました。そしてこの「clk」のように、頭文字でもない暗号の様なコードを使用したのは、製造メーカーを隠し、連合軍の工場への爆撃を避けるためのものでした。
Breithaupt & Sohnオフィシャルサイト
その他に1か所「S」と何かを組み合わせたような丸いロゴマークが底面に確認できましたが、その意味まで探ることはできませんでした。
機能性を追求したコンパス。機能と一体となった形の興味深さもさることながら、形態の変化やマークの持つ意味など、探っていくほどに背景がみえてきます。
変えることの出来ない過去と、変えていける未来を考えつつ、お手元でさらに深く探ってみるのはいかがでしょうか。
◆Germany
◆推定製造年代:c.1944年頃
◆素材:金属、ベークライト、他
◆サイズ:幅約5.5cm 奥行き約7.1cm 厚み約2cm
◆重量:102g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*現状コンパスは正常に動作します。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A