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Friday

まろやかで冷たくハードな矩形 / Antique Victorian Portable Inkwell by De La Rue & Co

 英国アンティーク、携帯型インク壺。





















英国のマーケットで手に入れた、ずっしりと重い矩形の物体。

四方は丸いエッジで仕上げられた木組みでできており、中央には金属製の箱がぴったりと納まっています。

正面に以下の文字。


RANSOME'S PATTENT

DE LA RUE & CO


そして背面には「PUSH」の文字が見られます。



この「PUSH」部分をぎゅっと押すと、金属本体が木枠から回転しつつぱかっと動き、ライターのようなものが起き上がってきます。木枠をベースにデスクに立て、蓋を開ければ中には小さなガラス瓶が現れます。

そう、これは携帯用のインク壺なのです。


開閉の様子を動画にしましたのでご覧ください。







ボールペンや万年筆が無く、ディップペン(つけぺん)の時代、液体のインクをどう携帯するかは大いなる課題でした。ガラス瓶にコルク栓では心もとなく、もっとしっかりと、もっと美しく携帯するにはどうしたらよいか・・・様々な携帯用インク壺が作られてきました。

当店でも革張り、金属製のものなど、何点か扱ってきました。機能とデザインが一体となったものはどれも美しいものでしたが、今回のものほど頑丈に作ってあるものを見たのは初めてでした。


それでは、由来を少し探ってみましょう。


まずは「DE LA RUE & CO/デ・ラ・ルー社」から。1793年、英国王室属領ガーンジー島で生まれ、印刷業を営んでいた「Thomas De La Rue/トーマス・デ・ラ・ルー」がロンドンに移り、1830年、プレイング・カード(トランプ)の印刷する権利を得て会社を設立したのがデ・ラ・ルー社の始まり。1855年には英国においてはじめての切手の印刷を請け負うようにもなります。1969年、トランプ事業をジョン・ワディントンに売却。そして現在ではセキュリティ印刷・製紙・紙幣鑑別システムを扱う英国の上場企業として確固たる地位を築いている、英国の老舗一流企業となっています。


そして「RANSOME'S PATTENT」=ランサムのパテント、ですが、このランサムについての詳細は不明。おそらくこのシステムを考案した会社または個人名だともうのですが、詳しくはわかりませんでした。ただ、ヴィクトリア時代イングランドの発明家として「Frederick Ransome/フレデリック・ランサム(1818-1893)」という人物がいます。家業の鉄鋼および農業機械製造業にかかわりつつ、1844年「Ransome's artificial stone/ランサムの人造石」を作り出した人物として有名ですので、ひょっとして彼の発明したシステムなのかもしれません。


ランサムの人造石は 天然石と同等の性質を持ち、見た目もよかったため、世界中で作られ、そして模倣された画期的な人造石であったようです。


参考:1872年9月の新聞、サンフランシスコPacific Rural Pressの記事

https://cdnc.ucr.edu/?a=d&d=PRP18720907.2.2&e=-------en--20--1--txt-txIN--------


ランサムのパテントをデ・ラ・ルー社が買い取り、名を冠して製品化した、というところかと思います。デ・ラ・ルー社は印刷業を主としてきましたが、印刷、インク繋がりでこのようなアイテムも作っていたのではないでしょうか。作られた時代は古く、19世紀後半、1880-1900年代頃と推測いたします。


おそらくはウォールナットで作られた木枠はインクの染みにまみれ、それでもなお美しく深い杢目をみせています。金属本体は動くとは思えないほどぴっちりと木枠に嵌っています。

手に取れば、心地良い重みとまろやかでなおかつ冷たい木と金属の質感が肌に伝わり、いつまでも触っていたくなるような気持ちにとらわれます。


アナログな筆記具を愛する方のデスクアクセサリーやコレクションに。

アンティークならではのギミックを愛する方へもおすすめな、英国アンティークの稀有なひとしなをお届けいたします。




◆England

◆推定製造年代:c.1880-1900年代頃

◆素材:木、金属、ガラス

◆サイズ:約6.1×7.3cm 厚み約2.1cm

◆重量:176g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色、インクの染み、金属部の歪み、小さなヒビ等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*金属の歪みにより、平滑面におくとわずかにカタつきます。

*開閉にはやや力とコツが必要です。動画にてご確認ください。

*コツをつかめば、女性の力でも問題なく開閉できます。

*木枠に本体が「ぴっちり」嵌りますので、指を挟まないよう十分ご注意ください。

*インクを入れて漏れるかどうかの検証はできておりません。

*機構部分にわずかにヒビをみとめますが、今のところ動きに支障はございません。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A