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Friday

WILD氏のアタッシェケース / Antique Leather Attache Case with Index Files to Innerlid by BIBBY & BARON Ltd

 英国アンティーク、レザー製のアタッシュケース。



























もともと荷物を運ぶ箱は木で出来ていて、革などで張られた「Trunk/トランク」でした。
でもこれは紳士が自分で運ぶのではなく、ポーターや従僕が運ぶべきものでした。


自分で「手にもって運ぶ」ための、荷物を入れる鞄の代表的なものは、初めは1826年にフランスのゴディロというメーカーが作り出した「カーペットバッグ」だと考えられています。文字通りカーペット(もしくはそれに近い素材)で作られた、柔らかい本体と金属製の開口部のある鞄で、英国でも使用されるようになり、ヴィクトリア時代にかなり広がったものです。例えばアーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズ、例えばアガサ・クリスティによるミス・マープルが使用していることをご存じの方も多いかもしれません。


次に英国では似たフォルムで革製のグラッドストーンバッグが開発されます。これは丈夫で手ごろなサイズだったため、医師に人気となりドクターズバッグという名称で進化を始めます。

また、1850年頃には英国の革職人ジェレミー・ステニングが箱のようなケースを開発したといわれており、これがアタッシュケースの原型という説があります。特徴は蓋を開くとケース全体を見渡すことができ、例えば膝に乗せて簡単なデスクのように使うことも可能であるというもの。

ちなみにアタッシュケースの語源はフランスから。本来の発音は「アタッシェ」であり、「アタッシェ/attache」は、大使館員や大使館付駐在武官・書記官のことで、彼らが使用していたことから「アタッシェケース」と呼ばれるようになったといわれています。日本では「アタッシュケース」と呼ぶことがほとんどですが、はっきりした間違いという訳ではなく、英語でも「アタッシュケース」発音されることがありますし、日本へはアメリカ経由で入ってきたと言われていますので、特に気にすることはないと思います。

それにしても英国人が開発したものをフランス人が名前をつけてアメリカ経由で日本に入ってくる・・・世界は繋がっているなあ、と実感いたします。




前段が長くなりました。

今回ご紹介するのは、そんなアタッシュケースです。

英国のアンティークフェアで手に入れたお品物で、売っていたのは眼鏡をかけた痩せぎすの英国人のお兄さん。他にも何個かレザーアタッシュケースを並べていて、このケースを開けながら「これは良いよ。1930年代頃。鍵は無いけど造りがしっかりしてる」
そんなふうに説明しながら開けて見せてくれたことを覚えています。


シックなブラウンレザーで出来ており、持ち手のところには「WILD」の刻印が入っています。恐らく持ち主の名前と思われます。「WILD」という苗字は格別多いわけではありませんが、アイルランド出身の詩人「Oscar Wilde/オスカー・ワイルド」(最後にeが入っていますが)を始めまあまあ存在する名前。ちなみに由来は「荒野に住む人」からきているとか。


シックなゴールドカラーで出来たロック金具を開けば、ややマゼンダ色がかった赤い内張が現れます。蓋側にはインデックスファイルが取り付けられており、見出しもついています。
正面には以下の刻印がみられます。


BIBBY & BARON Ltd
Bury, LANCS.


これは、かつてイングランドのランカシャー、「Bury/ベリー」にあった「BIBBY & BARON Ltd/ビビー&バロン有限会社」のこと。(現在ではベリーは「グレート・マンチェスター」に属しているとされていますが、ランカシャーのすぐ南なので昔はそうだったのかもしれません)1858年創業の会社で、様々な袋を製造しており、1999年にWelton社と合併し「WELTON BIBBY & BARON」となりました。現在ではWestburyを拠点とし、紙袋を始め様々なパッケージを製造している会社です。


WELTON BIBBY & BARON オフィシャルサイト 歴史の頁


ビビー&バロンの工場がベリーに在ったのは1970年代頃まで。その後の生産拠点は英国外となりベリーの町は働き口を失うことになりました。


参考:ベリータイムズの記事



現代ではパッケージを主としているビビー&バロンですが、かつては様々な鞄を取り扱っている時代があった、という事かと思います。パカッとひらくケースはデスクに置いたときに使い勝手がよさそうで、正面にファイルがあり様々な書類を詰め込むことができるので、当時のビジネスマンには重宝されたのではないでしょうか。


開閉に関しては、開ける時に2か所あるロックはどうやら中のバネが緩くなっているらしく、手で持ち上げる必要がありますが、閉める時は両方ともパチン、と音を立てて安定して閉まります。

動画をアップしましたので、よろしければご確認ください。








箱状ですので、収納力は抜群。ただ、1.9kgほどの重さがございますので、持ち歩き用というよりは、収納やディスプレイにおすすめです。

貴方の大切なコレクションを仕舞いつつ、時を経た革のシックな質感を堪能する・・・。そんな使い方はいかがでしょうか。



◆England
◆BIBBY & BARON
◆推定製造年代:c.1930年代頃
◆素材:革、布、金属、他
◆サイズ(外寸):幅約43.5cm 奥行き約9cm 高さ約30.5(+取手)cm
◆サイズ(内寸):約40.5×29cm 深さ約7cm
◆重量:1919g
◆在庫数:1点のみ


【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、アタリや凹み、傷みや変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*開ける時、ロックは手で持ち上げる必要があります。
*閉める時は2か所ともパチン、と閉まります。
*鍵は付属しません。
*インデックスの見出し窓には透明樹脂がはめ込まれていますが、1か所のみ透明樹脂がございません。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。



アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。



Todd Lowrey Antiques
by d+A