時に洗われたような革の質感。
その雰囲気にのまれて手に入れてしまった1冊の古書。
革表紙が一部差し込み式になっており、うまく閉じて持ち運べるようになっていることから、書斎で読む本ではなく、よほど身につけておきたい本なのだろうな、という印象でした。
タイトルは「Common Prayer」
これは、祈祷書。
主として英国国教会の祈祷書につかわれるタイトルです。
中を見てみれば、こんなコンテンツが並んでいます。
MORNING PRAYER 朝の祈り
THE PSALMS 讃美歌
等々。
そして、とても興味深いのが最終頁の見開き。
右側には以下の文字。（わからない部分もございます）
Thomas Ellis
This(His?) Book
September 26 1855
army....?
左側には以下の文字。
Found in the Sea
off Scotland
Date 24-10-45
これはこのように解釈できます。
1855年9月26日
誰かが、トーマス・エリス氏に何らかの理由でこの祈祷書を渡した。
「あなたのものとしなさい」・・・というような意味で。
1945年10月24日
スコットランド沖の海から、誰かが発見し、その旨を最終ページにメモを残した。
海中にむき出しであったわけではないでしょうから、なにかの箱に入っていたか、船荷の中にでも埋もれていたのでしょうか。1945年は第二次大戦が終わった年ですので、ひょっとして関係があるのかもしれません。
アーリーヴィクトリアンから90以上の歳月を経て、この本を発見した人は、そのことに縁を感じ、本の最後に記入せずにはいられなかったということでしょう。
大英帝国が繁栄を極めたヴィクトリア時代。
ヴィクトリア女王の治世は1837年から1901年までの63年間におよぶため、前期、中期、後期の意味でそれぞれアーリーヴィクトリアン、ミッドヴィクトリアン、レイトヴィクトリアンとよばれています。年代としては女王の夫、アルバート公が亡くなった1861年から1880年までがミッドヴィクトリアン、その前（1837-1860年）がアーリーヴィクトリアン、そして後（1881-1900年）がレイトヴィクトリアン。
その長い治世をくぐりぬけ、スコットランドの海からやってきた1冊の祈祷書。
トーマス・エリス氏をはじめ、いったいどんな人たちがこの本を手にしてきたのでしょうか。
時と海に洗われた革表紙に触れる時、貴方もその歴史に参加する一員となることでしょう。
◆England
◆推定製造年代:c.1850年代
◆素材：紙・革
◆サイズ：幅約9cm 厚み約1.8cm 高さ約13.3cm
◆重量:138g
◆在庫数：1点のみ
【NOTE】
＊古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色や破れがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
＊画像の備品は付属しません。
＊上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d＋A
