西ドイツアンティーク、卓上機械式計算機。
小ぶりだけど昔懐かしいレジスターのような見た目に惹かれ、近寄ってよーく見てみると、どうやら卓上で使用する計算機のよう。。。
機械式計算機って、ご存知でしょうか。
機械式計算機の歴史は古く、1642年、フランスの数学者 Blaise Pascal/ブレーズ・パスカル が、「パスカルの計算機」と呼ばれる機械式計算機を発明しましたが、その20年前に、
ドイツ人の天文学者 Wilhelm Schickard/ヴィルヘルム・シッカード が、計算の機械化について試みていたとの記述も残っていたそうです。
それから約200年後の1851年、フランス人発明家の Thomas de Colmar/トーマス・デ・コルマーによって、最初に商業的に成功した アリスモメーター と呼ばれる機械式計算機が普及し、約40年間世界中で販売、
19世紀後半にはその発展型がヨーロッパの20近くの企業で製造、さらにそれに続いて、スウェーデン人発明家のヴィルゴット・オドネルが、より完成度の高いオドネル歯車式計算機を1890年から量産しました。
機械式計算機は、国家の統計局や会社の経理部、会計士や税理士、計算の仕事が多い業種の商店や個人事業主、設計技師、研究者などによって、20世紀後半まで日常的に用いられていましたが、
1970年代に入ると、電子計算機、いわゆる電卓が一般に登場し、プリンタを内蔵したデスクトップモデルから、安価なカードサイズまで、電卓の急速な普及と共に機械式計算機は衰退しました。
今回の機械式計算機は「 Summira 7 」というモデルで、プリンター付きのタイプもあり、1950年頃に製造されたものです。
製造元は、分断時代の西ドイツの首都 Bonn/ボン に近い Roisdorf/ロイスドルフ という村の Paul G. Mueller/ポール・ミューラー との記録があります。
機構は、歯車を用いた機械式計算機で、アリスモメーターや、オドネル歯車式計算機の流れを継いだ進化型と思われます。
主に西ドイツで、同種のモデルを数社が販売しており、なかには、金属製のペンを使って各数字のギアを動かすものもありますが、このモデルは、人差し指で簡単に動かすことができるので、
より扱いやすく改良されています。
簡単に使い方をご説明しつつ、「507+293-350=450」を計算してみましょう。動画でもアップしておりますのでよろしければご覧ください。
1.最頂部の7つの窓が全て「0」になっていることを確認。正面右端の縦レバーも「+」の位置にあることを確認。
2.「507」を入力。
入力したい数値に対する、それぞれの数字に人差し指を置き、最下段まで手前に押し下げ、最下段に並んだ数値を確認します。
(100の位の5のレバーを下まで下げる。10の位は0なので、レバー操作は不要、1の位の7のレバーを下まで下げる。)
3.正面下部にある横レバーを押し下げる。数値の歯車は元に戻ってリセットされます。
4.正面右端の縦レバーが「+」の位置にあること再確認。「293」を入力。最頂部の表示は「800」となります。ここで既に「507+293」の結果が表示されています。
5.正面下部にある横レバーを押し下げる。数値の歯車は元に戻る。
6. 操作を「-」に変換するために正面右端の縦レバーを「-」の位置にずらす。最頂部の表示が奥にずれて数値も変わりますがそれは無視。
7.「350」を入力。
8. 正面右端の縦レバーを「+」の位置に戻す。計算結果「450」が示されます。
9.計算が終了したら、次の計算のために、正面下部にある横レバーを押し下げ、数値の歯車を元に戻し、右側面のハンドルを時計回りに回してすべての数値を「0」としておきましょう。
以上が基本操作となります。使い方がわかればとても簡単ですが、念のため以下補足です。
この機械式計算機は、足し算と引き算の計算に対応しており、7桁までの数値であれば、何度でも入力ができ、合計数値を表示します。
ただし、一度動かした歯車は元に戻せないので、入力ミスをした場合は、もう一度最初からやり直すか、調整数値を途中で入力する必要があります。
最頂部の黒で囲われた7つの窓、カンマの位置が3桁区切りでないのは、欧米の通貨が基準になっていたので、下二桁は補助通貨用だと思われます。
例えば、英国であれば、3,99(3ポンド99ペンス)、米国は、2,75(2ドル75セント) などとなりますが、日本で使う場合、このカンマは無視してください。
正面右端の縦レバーを、加算の場合は「+」、減算の場合は「-」の位置にしてから、数値を入力するのですが、レバーは、動かす時に少し左側に押すとロックが解除されて簡単に動かせます。
減算の場合、縦レバーを「-」の位置にすると、最頂部の表示がいったん奥にずれるのですが、数値を入力し、縦レバーを「+」の位置に戻すと、合計された数値になって最頂部に表示されます。
小さなレジスターのような可愛らしく懐かしいフォルムではありますが、レバーの隙間から中を覗き込めば沢山のパーツが絡み合う、複雑な機構に驚きます。
重さはなんと2kg超、女性であれば片手で持つのは難しいほどの重量感。
その分安定感があり、数限りない操作に耐えてきたたくましさが感じられる機械式アナログ計算機は、機械式腕時計のように、電力に頼らなくても永遠に駆動する歯車の魅力が詰まっています。
卓上のディスプレイとしても魅力十分、たまに歯車を動かし、心地良い音と共に、のんびりした時間を愉しんでみてはいかがでしょうか。
◆West Germany
◆推定製造年:c.1950年頃
◆素材:金属
◆サイズ:幅約12.7cm 奥行約17.8㎝ 高さ約13.0cm
◆重量:2150g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に傷や汚れなどがみられますが、動作は正常です。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A