ドイツアンティーク、振れ見器の3点セット。
8の字を描くふたつの輪っか、ジョイント部を軸に開閉する様は、クワガタムシの大きな顎のよう。
何とも興味い真鍮の物体は、「振れ見/Truing Caliper」という古い機械式時計用のツールです。
大切な時計を誤って落下させてしまったら、運が悪いと、動かなくなってしまいますね。
例えば、自動巻き腕時計は、適度に振動を与え続けないと止まってしまいますが、精密機械ゆえ、当然強い衝撃には弱いのです。
原因としては、ゼンマイ部分が外れてしまったり、歯車などの部品のかみ合いが外れたり、針落ちしたり、といろいろですが、深刻なのは、機械式時計の心臓部にあたる、車輪のような形状で小刻みに動く部品(テンプ)の中心軸(天真)が折れてしまうことです。
この、破損したテンプを修理し、形状としては元に戻すことができたとしても、精密部品ゆえに、そのバランスを確認、調整することがとても重要で、そのためのツールのひとつ、「振れ見」が今回の商品となります。
以降は、専門領域ゆえ、説明も十分とはいえませんので、それを踏まえてお付き合いいただけると嬉しいですが、ご興味のない方は読み飛ばしてください。
機械式腕時計は、手でリューズを巻くか、ローターの回転によって自動的にゼンマイを巻き上げてくれることによって動きます。
ゼンマイが巻かれ、そのゼンマイがほどかれる力がエネルギーとなって、4つの歯車で構成される「輪列機構」に伝わり、「ガンギ車・アンクル・テンプ・ヒゲゼンマイ」で構成される脱進機にて一定の速度へと変換されます。変換されたゼンマイの力は規則的なリズムを生み出し、各歯車に取り付けられた時針・分針・秒針が時を刻みます。
一定の速度でキープさせるために、脱進機(エスケープメント)とよばれる「ガンギ車・アンクル・テンプ・ヒゲゼンマイ」で構成される機構が重要で、この発明と度重なる改良の歴史が、今日の機械式腕時計の進化そのものと言われています。
脱進機の中で特に重要なのが時計の「心臓部」ともいえるテンプとヒゲゼンマイです。テンプとヒゲゼンマイは振り子時計でいうと「振り子」の役割をし、精度を決めます。
テンプ(天符)は、車輪のような形をしているテンワ(天輪)と、中心軸となるテンシン(天真)などのパーツにヒゲゼンマイを加えた集合体を表し、テンプは「正確」に行ったり来たりする往復運動を繰り返し、時計に精度を与えます。
さて、折れてしまった天真を新しい物に交換するのですが、ふたたび天輪にカシメて圧着、「振り座」という部品を取り付けると、どうしてもその過程で少し歪みが出てしまうので、
そこで、「振れ見」というツールを使って振れ取りを行います。振れ取り作業で歪みを修正し、天輪が天真を軸にして綺麗に回転するように調整します。
この振れ取りという作業は、自転車のホイールなどでも良く行われる重要な要素なのですが、ホイールを回転させて、横揺れや縦揺れがないかをチェックし、それを調整する行為です。
画像のように、天真の両端をこのツールで挟み込み、風を吹きかけ回転させ、天輪の揺れや歪みがないかを確認します。
3つのうちのひとつは、中央のジョイント部に別パーツが取り付けられていて、欠損していますが、本来であればその先にガイドのようなものがあり、より正確に天輪の歪みをチェックすることができたと思われます。
「振れ見」は現在でも使用されており、より繊細に調整できるようスクリューやガイドなどが付加されておりますが、今回のような真鍮製のシンプルな形状の振れ見は、アーティスティックでとても味わいがあります。
今でも機械式時計の修理には無くてはならない工具は、はるばるドイツから来たプロフェッショナルツール。
実際にご使用いただくのはもちろん、アンティークツールがお好きな方にはコレクションに最適かと思います。
歳月を経た鈍い金色に光る真鍮の味わいも素晴らしい、ドイツのアンティークツールを、貴方なりの方法でお愉しみください。
◆Germany
◆推定製造年:c.1930-1950年頃
◆素材:真鍮
◆サイズ:幅約8.0~8.9cm 奥行約3.7~4.2㎝ 厚さ約0.4~1.2cm
◆重量:19g、25g、36g
◆在庫数:3点で1セットの販売です。
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に傷や汚れ、錆などの金属部の経年変化等がみられますが、動作は正常です。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A