英国アンティーク、リングチェーン付きコインパース(小銭入れ)。
英国のアンティークフェアで手に入れた、可憐なフォルムのリングチェーン付きコインパース(小銭入れ)のご紹介です。
このようなタイプのコインパースは基本的に女性用で、ヴィクトリア時代からよく見られます。チェーン中央のリングは、指を通すため、そしてシャトレーン(腰に付けた金具から色々な物を下げる仕組み)用としても使えるようになっています。
このコインパースのポイントはふっくらと可憐なフォルムと、細かなデザイン。中央はハート形で、周囲にはアカンサスの陰刻が施され、ハート上部にはネオクラシカル様式の時代にはやった釣り鐘草があしらわれています。開け閉めの金具は球状で、全体のフォルムによくあった可愛らしさです。
そして片側の下部には「RD.626017」、反対側には同じ番号に加え「EPNS」およびメーカーズマークらしき「D.C」の刻印をみることが出来ます。
「EPNS」とは「Electro Plated Nickel Silver」の略で、日本では「洋白銀メッキ」等と呼ばれます。真鍮(銅と亜鉛の合金)にニッケルを加えた合金に電気の作用で銀をメッキしたもので、1840年頃からバーミンガムのエルキントン社が各種特許を取得し製造を始め、19世紀後半には一気に広がりました。ちなみにそれまでの銀メッキは、オールドシェフィールドプレートが主流で、銅をベースに薄い銀板を熱と圧力で張り合わせた物でした。
銀メッキは使っているうちに銀が剥げてきてしまうことがほとんど。そしてオールドシェフィールドプレートは銅の色が見えてきます。一方でEPNSはニッケル合金なので、黒ずんだニッケル調の肌がみえてくるものが多いのですが、今回ご紹介しているパースは、どちらかといえば銅の色に近い物となっています。
推測ではありますが、真鍮(銅と亜鉛の合金)にニッケルを加えた合金ですので、配合の割合によって地金の色も幅があったのではないでしょうか。そして、このお品物は真鍮率が多めなのかもしれません。
「RD.626017」とはレジストレーション番号の事。1842年から1883年まではダイヤモンドマーク(もしくはカイトマーク)で意匠登録の年月日を表していましたが、1884年からは登録年を表すレジストレーション(レジスタード)番号となります。そして「626017」は1913年に登録された番号となります。
最後に、メーカーズマークらしき「D.C」のメーカーは特定することができませんでした。
まだまだしっかりしている金具を開ければ、数種類のコインを仕分けておくことができる薄茶色のレザーで作られた内部が現れます。多少の傷みはあるものの、十分ご使用に耐えるものと思います。興味深いのは、銀メッキが残っている側と、かなり剥げてしまった側でかなり異なる表情を持っていること。恐らくは腰に下げ、ずっと同じ側を内側にしていたのではないでしょうか。
歳月を経てまた新しい表情を得た、レディのための小さなお役立ちアイテム。
これからは貴方のお手元で、小さく大切な物を仕舞ってみては如何でしょうか。
◆England
◆推定製造年代:c.1913年以降数年
◆素材:金属、銀メッキ
◆サイズ:チェーン含む高さ約17.5cm 幅約8.6cm 厚み約2.5cm
◆重量:74g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、メッキの剥がれ等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*金具は「パチン」としっかり音をたてて開閉し、安定して閉めておくことができます。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A