英国アンティーク、スターリングシルバーのグリップを持つステッキ。
20世紀初めの装飾芸術、アール・デコ(Art Deco/新しい装飾)。
植物の有機的な曲線をテーマにしたアール・ヌーヴォーが19世紀末にヨーロッパを席巻し、そのあとにやってきたのがアール・デコです。有機的なアール・ヌーヴォーに対し、直線と幾何学的な曲線を組み合わせた、構造的で理知的ともいえるアール・デコは工業製品とも相性がよく、一大ムーブメントとなりました。
アールデコが花開いたのはパリを中心としたヨーロッパやアメリカですが、もちろん英国にもその波は確実にやってきていました。ただ、室内装飾や家具においては、英国では装飾が多かったヴィクトリア時代から、すっきりとしたエドワーディアンに変わった頃でしたので、その波と交じり合い、それほど顕著にアールデコ様式として確立はされなかったように思います。
一方で小物雑貨においてはその限りではなく、女性のアクセサリーをはじめとして、多くの英国でのアールデコ様式をみることができます。
前段が長くなりました。
今回ご紹介するステッキのグリップには、そのアールデコ様式が確かに刻まれています。
グリップという限られた空間の中で直線を効果的に配し、その間に細かな装飾を施して、アールデコならではの構造的な美しさを体現しています。でもよく見ればあくまでも手仕事で仕上げられており、人の手の温もりが感じられるのが、完全なるアールデコではない英国らしさと言えるような気がします。
さて、英国アンティークシルバーの印、ホールマークを見てみましょう。
まず左端はメーカーズマーク。次にデイトレター、スターリングシルバーの証、ライオンパサント。右端はアセイオフィスのマークで、ロンドンの豹。デイトレターはシールドに小文字の「i」ですので、1924年にロンドンのアセイオフィスで認可を受けたものであることを表しています。メーカーズマークは「B M」。ロンドンで「B M」のメーカーズマークをもつシルバースミスは何軒かあったようですが、どこのものか特定はできませんでした。
1924年といえば、1910年頃から始まったアールデコがほぼ完成し、様式として成熟を迎えていた頃。大陸からやってきた新しい意匠は、どのように英国民に受け入れられたのでしょうか。
アクセサリーやステッキのグリップのような小さな場所に、少しアクセントとして加えてみる。全て受け入れるのではなく、エッセンスを抜き出して愉しんでみる・・・。そんなところだったのかもしれません。
シャフトの材は木ですが、はっきりとした杢目は無く、比較的素直な木肌で軽めであることからブナ系かと推測いたします。柔らかな印象のシャフトとアールデコの意匠を施したスターリングシルバーは、各々の役目を全うしつつも引き立てあい、とてもよい調和を描いているように思います。
100年前の最先端の意匠を、当時の紳士の想いと共にご堪能ください。
◆England
◆推定製造年代:c.1924年
◆素材:スターリングシルバー、木、真鍮
◆サイズ:全長約85.3cm グリップ直径約3cm
◆重量:164g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色や歪み、アタリ等がみられます。
*比較的軽めのステッキですが、体重をかけてもほとんどしなりません。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A