古い書類には、独特の魅力があります。
まず、材やインク、書式や文字体の魅力。
そして内容について調べるにつれ、当時の時代背景が鮮やかに蘇る楽しさ。
今回ご紹介する書類も、その魅力が存分につまっています。
ゆっくりとみてゆきましょう。
わずかに透明感のあるアイボリーの紙に、活字とハンドライティングで綴られた冊子。
表紙には以下のタイトルが掲げられています。
「This Indenture」
「この契約書」は・・・と、以下、契約書の内容が連綿とつづられています。
裏表紙には、以下の内容。
Dated 16th October 1914
EDWIN EVANS Esq.
to
Mr.E Blerc
(COUNTERPART)
Lease
of No.34 Bracken Avenue
Nightingale Lane
in the county of London
Commencing the 25th day of March 1913
For years----99
Expic(r)*es the 25th day pg march 2012
RENT ￡6.10.0
Haslewood, Hare & Co.,
139, Temple Chambers, E.C.
*おそらくcとrを間違えています。
内容としては・・・
1914年10月16日
エドウィン・エヴァンズ殿
から
E.ブレーク氏へ
(COUNTERPART)=副本
賃貸
ナイチンゲールレーン ブラッケンアヴェニュー34番地
1913年3月25日から始まり、1999年まで。
2012年3月25日には期限切れ
賃貸料 6.1ポンド
（最後の2行はこの契約の仲立ちをした事務所と思われます）
・・・という内容かと思います。
つまり、賃貸契約書。
「No.34 Bracken Avenue Nightingale Lane」現在も存在している番地。
ロンドン南部、クラパム（夏目漱石が滞在していた町）の近く、比較的庶民的なテラスハウスが並んでいるエリアとなっています。
表紙から始まる文章においては、賃貸契約の詳細の内容が綴られていますし、裏表紙の部分には物件の地図と、区画のサイズまでがきちんと図にされています。
それにしても、ずいぶん長い契約。1913年から1999年まで、ざっと86年もあります。
賃貸料がずっと6.1ポンドということはないと思いますので、詳細の内容にはそれについて触れているのかもしれません。
そんな内容自体も興味深いのですが、なによりも印象的なのは使用されている紙。
これは、羊皮紙。
文字通り羊の皮から作られた紙で、長持ちし、独特の風合いがあるのが特徴。
破こうとしてもかなりな力が必要なほど丈夫なため、聖書や公文書等、貴重な文書に使用されてきました。
現在でも生産、販売されていますが、A4版で1枚約5000円ほど（販売店や質によりばらつきあります）。
そんな貴重な羊皮紙に記された、賃貸契約書。
触ってみれば、しっとりとしなやかな、それでいて張りのある風合い。
一般の植物からできた紙と比べれば、やはり動物的ななにかを感じずにはいられません。
今までにこのような書類は何通も扱ってきましたが、ヴィクトリア時代はほぼこのような書類は手書きでした。
ただ、今回ご紹介する書類は1914年、エドワーディアンの頃。すでにロンドンには馬車ではなく車が走っている時代です。
書類の多くの場所が活字となっており、最後に埋める部分だけが手書きとなっている効率的な仕様となっています。
印紙も張り付けたのではなく、印刷されていますので、印紙が印刷された契約書用の羊皮紙が用意されていたのでしょう。
それでも、少し透けた羊皮紙の質感はしっとりと手に優しく、整然とならんだ活字と手書き文字のコントラストが美しい書類となっています。
100年以上前に作られた、ロンドン南部の町の賃貸契約書。
それがつい2012年までおそらく有効であったことに驚きを覚え、一気に100年前を身近に感じる。
アンティークの書類の魅力を存分に味わえる、英国アンティークの雰囲気あふれるドキュメントです。
◆England
◆推定製造年代:c.1914年
◆素材：羊皮紙・他
◆サイズ（二つ折りのとき）：幅約25.2cm 高さ約37.6cm
◆重量:27g
◆在庫数：1点のみ
【NOTE】
＊古いお品物ですので、羊皮紙には折れ、小傷や汚れ、変色、書き込み等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
＊四つ折りでのお届けとなります。
＊画像の備品は付属しません。
＊上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d＋A
