英国アンティーク、黒色の小抽斗。
日本がお手本とした英国の郵便システム。
1840年、世界初の切手ブラックペニーが発売され、それまで受取人が支払っていた郵便料金を差出人が払えるようになりました。これにより、郵便システムは飛躍的に発達。ヴィクトリア中-後期の英国はまさに郵便大国であり、ロンドンでは配達が1日になんと12回あったとか。1870年頃から流通したポストカード(絵葉書)もそのシステムにのり、大量に製造販売され消費されていきました。
今回ご紹介するのは、その絵葉書を売るための什器として使われていたと思われる小抽斗です。英国のアンティークセンターで手に入れた黒色の小抽斗。薄手の二段引き出しで、前板には以下の文字がみられます。
W.J.PETHYBRIDGE & SONS Ltd
PAPER WAREHOUSE
CALDWELL YARD.
UPPER THAMES ST.
LONDON
EC
少しづつ調べてみました。
「UPPER THAMES STREET/アッパーテムズストリート」はロンドンに現存する通りの名前。セントポール大聖堂より少しテムズ河に寄った位置にあり、テムズ南河沿いに走っている通りのことです。CALDWELL YARD.については詳細不明。おそらくかつてアッパーテムズストリート沿いに在った場所の名前かと思われます。
また「W.J.PETHYBRIDGE & SONS Ltd」についても詳細は不明ですが、1890-1900年頃にロンドン、「Tudor Street/チューダーストリート」3番地で事業をしていたポストカードの製造会社であることがわかりました。同社の社名が入ったヴィクトリア時代のポストカードを、アンティーク市場で散見することが出来ます。
このチューダーストリートとアッパーテムズストリートは1マイルも離れていません。同じころにCALDWELL YARDにも倉庫もしくは事務所があったのかもしれないな、と推測いたします。恐らく宣伝も兼ねて会社名の入った什器として、ポストカードを販売する小売店に置かせてもらっていたのではないでしょうか。
ちなみに「EC」は英国のポストコード、日本でいえば郵便番号のようなものです。ただし、場所はかなり特定できます。現在ECは「EC1-EC4」まであり、東ロンドン中心地(East Central)に割り振られたアルファベットとなります。
このポストコードシステムが英国で開始されたのは1857年。当初 (1857~1858年) は、まずロンドンで中心部が EC (東中央)、WC (西中央)、N、NE、E、SE、S、SW、W、NW の 10区分に分かれました。その後は各大都市に広まっていき、郊外、そしてブリテン島以外にも広まっていきます。
1917年、戦時中の効率化策として、各地区は番号で識別される小区に分割され、アルファベットの後に数字がつくようになりました。
現在ではアルファベットと数字を組み合わせたポストコードがほぼ英国領全域に割り振られており、マップ検索やナビで入力する際にはとても便利になっています。参考までにセントポール大聖堂のポストコードは現在では「EC4M 8AD」となります。
よって品物にポストコードが入っていれば、少なくても1857年以降のものである、というひとつの指標としてお考えいただけるかと思います。
さて、お品物の説明に戻ります。
構造材は木で、仕上げは紙貼り。2つある取っ手は真鍮製で、黒に金が程よいポイントとなっています。多少の使用感はございますが、構造はしっかりとしており、まだまだ実用にお使いいただけそうです。大きさは引き出し内にA4サイズがちょうど入る大きさ。紙入れやハガキ入れに便利にお使いいただけるかと思います。
今はデジタルが主流を担う、離れた人とのコミュニケーション。でもたまにはアナログに、絵葉書やカード、そして封書を送ってみるのはいかがでしょう。その時のために、この抽斗にとっておきの手紙コレクションを仕舞っておく・・・。
そんな考えにご賛同いただける方、お待ちしております。
◆England
◆W J Pethybridge & Sons, London
◆推定製造年代:c.1890-1900年代頃
◆素材:木、紙、布、金属
◆サイズ(外寸):幅約35.5cm 奥行約26.7cm 高さ約14.4cm
◆サイズ(抽斗内寸):約32.4×24.5cm 深さ約5.3cm
◆重量:1658g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色等がみられます。
*天板は見る方向によっては何かを置いていた跡が見えることがあります。
*構造体は木ですが仕上げ材は紙や布ですので、水にはご注意ください。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A