英国ヴィンテージ、全て異なるアセイオフィスのマークをもつ銀のスプーンセット。
このスプーンセットの凄さをお伝えするために、まず英国の銀器についてご説明をしなければいけません。
英国では純銀(純度92.5%)を「スターリングシルバー/Sterling Silver」と呼び、すべて「Assay Office/アセイオフィス/検分所」の認可を受けなければなりません。このシステムは12世紀にまでさかのぼり、英国で作られた純銀製品にはすべてホールマークと呼ばれる刻印があります。(*基本的にはそうなのですが、時々検分を受けていないシルバーも流通しているようです)
ホールマークは数種類からなり、一般的には左から順にアセイオフィスのマーク、スターリングシルバーを表すライオンのマーク、製造年を表すデイトレター、そしてシルバーメーカーのマークとなっています。このマークを読み解けば、誰が、いつ、どこで認可を受けたのかがすぐわかる仕組みとなっています。
もともとは税金を徴収するために作られたシステムですが、このシステムを几帳面に守ってきた英国人気質が現在においても英国のシルバーの多くがきちんと残り、世界的に評価されている大きな要素となっています。
さて、過去から現在まで、英国(アイルランド含む)のアセイオフィスは全部で11か所。
そのなかで現在も営業を続けてるのは、英国ではLondon/ロンドン、Edinburgh/エディンバラ、Birmingham/バーミンガム、Sheffield/シェフィールドの4か所。アイルランドではDublin/ダブリンの1か所。
その他の以下6か所は、長い歴史の末にクローズしてしまいました。
York/ヨーク 16世紀から1856年まで
Exeter/エクセター16世紀から1883年まで
Newcastle/ニューカッスル 17世紀から1884年まで
Norwich/ノリッチ 1702年まで
Glasgow/グラスゴー 17世紀から1964年まで
Chester/チェスター 17世紀から1962年まで
そんな歴史をもつ英国の銀器。
もちろん、一般的にはシルバーメーカーは最寄りのアセイオフィスで認可を受けますので、普通のスプーンセットはもちろん、セット物はすべてひとつのアセイオフィスのマークが刻印されることがふつうです。
その常識に反し、このスプーンセットはなんと1本づつすべて異なるアセイオフィスのマークが刻印されています。
グラスゴーとチェスターのオフィスが閉まる直前、1962-1964年当時の英国(ここではUnited Kingdomを指します。アイルランドは含みません)全てのアセイオフィスのマークをもつスプーンセットを作るべく、1908年創業のシェフィールドのシルバースミス Travis Wilson & Co Ltd が制作したものなのです。
シルバースミスにとっては大切な仲間のようなアセイオフィスが2か所もクローズするにあたり、記念碑的なセットを作っておきたい、という気持ちが作らせたものなのではないでしょうか。
各スプーンのホールマークの内容は以下の通り。
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Chester/チェスター 1962年
営業期間:17世紀から1962年まで
マーク:3束の小麦(チェスターの紋章より)
Glasgow/グラスゴー 1963年
営業期間:17世紀から1964年まで
マーク:てっぺんに小鳥がとまっている木。幹が魚。
Edinburgh/エディンバラ 1963年
営業期間:15世紀から現在まで
マーク:はじめは1本の塔。1617年より三本の塔のお城。
Birmingham/バーミンガム 1963年
営業期間:1773年から現在まで
マーク:錨
Sheffield/シェフィールド 1963年
営業期間:1327年より現在まで
マーク:1974年までは王冠。以降現在までは薔薇。
London/ロンドン 1964年
アセイオフィス営業期間:1327年より現在まで
マーク:豹の頭。時々王冠付き。1697~1720のみ横向きのライオン。
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裏ぶたには各オフィスのマークと説明書きが印刷されています。
スプーン自体のデザインはシンプルで上品。
特に凝った彫や透かしがあるわけではありませんが、ちょっと珍しい先端がとがったフォルムには、記念碑的な作品とするにふさわしい普遍的な美しさが内在しているかのようです。
一見なにげないふりを装いながらも、実は希少で、二度と手に入らないもの。
製造後まだ60年余りのヴィンテージ品ではありますが、間違いなく英国アンティークの粋を極めていくにちがいないひと品です。
◆Sheffield England
◆Travis Wilson & Co Ltd
◆推定製造年代:1962-64年
◆素材:スプーン/スターリングシルバー
◆サイズ:外箱約20×15.5×3cm スプーン長さ:約11cm
◆在庫数:1セットのみ(スプーン6本と外箱のセットです)
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷などがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*Londonのスプーンには、肉眼では非常に気づきにくい大きさですが、ホールマークの下にごくごく小さな書き込みがございます。
*外箱には多少の汚れや擦れがみられます。また、2か所ある留め金のうち1か所には受けの金具がございません。
*全体としては通常のご使用に十分耐える、よいコンディションだと思います。ご了承の上、お求めください。
*画像の小物は付属しません。
*このお品物は当店の姉妹店「Reminiscence」から移行してきたものです。過去に「Reminiscence」のブログで紹介されておりますので、検索時にご覧になるかもしれませんが、品物はこれ一点であり、当店で在庫しておりますのでご安心ください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A