英国アンティーク、黒檀のピンディッシュ。
英国中部、定期的に大きなアンティークフェアが行われる地域。
街道から少し入ったところにあるホテルの宴会場で、しばしば行われるアンティークフェアがあります。大きなアンティークフェアの前後に絡めて開催され、出店者も良い物をお持ちの方が多く、私たちも何度も訪れてきたフェアです。
今回も行く予定だったのですが、大きなフェアのひとつがかなり直前に日程がずれて、日にちが重なってしまいました。ホテルのフェアは前日の16:30からバイヤー向けのアーリーイブニングがあったので、仕方ないからそこだけ行こう、と行ってみたのですが・・・。
ホテル周りにフェアの看板はなく、人出も少ない。恐る恐る会場に向かうと、会場の扉は閉まり、扉の前に1つだけストールが出ていました。そのストールにみっちりと集まっている英国の方々に紛れて、一人だけ日本人の方がいらっしゃいました。事態を把握しかねていると、その方が親切に教えてくれました。
「今日、明日のここのフェアは中止だそうよ。このストールの人は、このホテルに泊まっているので、なんとかお店を広げさせてもらったんですって。」
回りを見まわせば、ぼちぼち集まってくるお客さんらしき人々に、ストールのレディはいちいち丁寧に事情を説明しておりました。
フェアの中止ってあるんだ・・・。
おそらく直前に日程がずれた大きなフェアの影響でしょう。でも、事前に再チェックしたこのフェアのウェブサイトで案内もなく、会場にきて初めてわかる中止とは。今回は近いところだからよかったけど、もし遠い場所でこれをやられたら、限られた日程では大打撃です・・・。気を取り直し、親切なレディのストールから何点かの小物を買うことが出来ました。
前段が長くなりました。今回ご紹介するのは、そんな経緯で手に入れた小さなピンディッシュです。
目を惹く珍しいダイヤ型シェイプ。作られた時代はヴィクトリアン後期と推測いたします。派手な飾りはないものの、中心部に同じくダイヤ型の金属が配されており、程よいポイントとなっています。底面には「EBONY」の刻印があり、この黒い木は「ebony/エボニー/黒檀」であることを語っています。
銘木、黒檀。
インドやアフリカなどで自生する南洋材で英国をはじめヨーロッパでは自生しない木です。黒く艶めく美しい材はヨーロッパでは大変貴重とされ、多くの最高級家具や贅沢な小物などが製作されてきました。
フランス、ヴェルサイユ宮殿ではルイ14世の家具職人、「Andre Charles Boulle/アンドレ・シャルル・ブール(1642-1732」が作り出す、鼈甲と銅板の象嵌技術で彩られた黒檀の家具が来訪者を驚嘆させていたといいます。また、憧れはあるがなかなか手に入らない・・・そんな需要にこたえ、通常の木材を黒く塗ることを「エボナイズド」とし、その手法でも多くの良い家具が作られました。
そんな憧れの材、黒檀。ヴィクトリアンの富裕層では、黒檀でできたドレッシング小物がよく使われていました。小箱に手鏡、ブラシにピンディッシュ。シックな色合いと目の詰まった心地良い手触り、そして醸し出すオリエンタリズムと高級感は、当時の人々の心を強く掴んでいたようです。
また、紋章学において高さよりも幅が若干狭い縦長の菱形は「lozenge(ロゼンジ/ロズンジ)」とよびます。(「lozenge」は「トローチ(のどあめ)」で使われている形ですので、翻訳すると「トローチ」と出ることが多いですが)
特に紋章の外枠がシールドではなく、ロゼンジの場合は、女性の紋章として使われることが多かったようです。これは女性は戦闘に参加しないためシールドはふさわしくないという考えからのようです。ただ一方で、女性が紋章をもつということはかなり特別な地位にある人ということにもなります。
こんなことから、推測ではありますが、このダイヤ型のピンディッシュは、かなり上流階級のレディのドレッシングテーブルで使われていたものかもしれません。
大きさは約8×11.8cmと、手のひらに納まるサイズ感。小さいながらもクオリティが高い漆黒のロゼンジは、貴方の大切な物をしっかりと受け止めてくれることでしょう。
◆England
◆推定製造年代:c.1880-1900年代頃
◆素材:黒檀、金属
◆サイズ:約8×11.8cm 高さ約1.6m
◆重量:44g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A