英国アンティーク、卓上永久カレンダー。
ソリッドな黒い台座に載せられたクローム仕上のパイプは、長さ約10cm、直径2cm弱と、とてもコンパクトな佇まい。
このスタイルのカレンダーとして有効に機能させるには、恐らくギリギリの細さの中に、各種のキャラクターが仕込まれています。パイプの両エンドにある黒いプラスチックのキャップを回すと、左側は月、右側は曜日を変更でき、さらに外側の真鍮のつまみで、左右それぞれの日付の数字が変更できます。4つの窓だけで、1年365日の今日を表現し、繰り返し今後何年でも永久に使用できます。
黒の台座は、若干の年月の経過は感じられますが、鏡面仕上げは健在で、恐らくアール・デコ時代に流行した ベークライト/Bakelite 製と思われます。
ベークライトは、「プラスチック産業の父」と呼ばれるベルギー生まれの科学者 Leo Hendrik Arthur Baekeland レオ・ベークランドによって工業化に成功し、プラスチック時代の始まりを告げる発明となりました。
レオ・ベークランドは1889年にアメリカへ移住後、様々な研究、発明を経て、1872年に発見されたフェノール樹脂の特性に着目し、フェノールとホルムアルデヒドの反応時の圧力と温度を制御することで、1907年、完全な人工合成樹脂となるフェノール樹脂の合成に成功します。
その後、1909年に特許を取得、1910年、生産を目的にベークライト社を設立し、そのフェノール樹脂を ベークライト/Bakelite と命名しました。
ベークライトは、有機天然素材を原料とするそれまでのプラスチックから、大幅に進歩した世界初の合成樹脂として注目され、その高い絶縁性と耐熱性から、電気部品や家電製品などの分野で、それまでのセラミックや硬質ゴムに代わる最初の商業生産された合成樹脂となり、1920年代にはスイッチ、ダイヤル、回路基板、ラジオなどに広く活用され、自動車の電気系統や銃・ナイフなどのハンドル材にも用いられました。
1920~30年代は、ベークライトによって成型された色とりどりのアクセサリーや小物が他のフェノール樹脂製品とともに人気を博しました。
充填材や強化材を配合しているため、ベークライト製品はほぼ不透明で暗色だったことからも、今回の黒い台座もこの時代に製造されたことがうかがえます。
そんなベークライトですが、製造の過程で爆発の危険があるなどしたため、その後、改良されたプラスチックが普及し、1960年代には姿を消すことになりますが、
従来のプラスチック製品とは発色や手触りが違うことから、近年、古いベークライト製品の「レトロ」な魅力が評価され、アンティークのひとつとしてコレクションの対象となっています。
1925年に開催されたパリ万国装飾美術博覧会/アール・デコ博(Exposition Internationale des Arts Decoratifs et Industriels modernes)をきっかけに流行したアール・デコ様式と、同時代に実用化されたベークライトの親和性はとても高く、魅力的なデザインアイテムとして多くの国で生産されました。
コンパクトなボディにアール・デコの時代背景が凝縮された卓上カレンダー、
是非お手元に置いて、日々の移り変わりにちょっとしたアクセントを加えてみませんか。
◆England
◆推定製造年:c.1930年代頃
◆素材:スチール・真鍮・ベークライト
◆サイズ:幅約11.9cm 奥行約7.5㎝ 高さ約3.5cm
◆重量:160g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小さな傷やへこみや汚れ、金属部の経年変化等がみられますが、動作は正常です。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A