フィンランドヴィンテージ、液体充填海洋コンパス。
今回ご紹介するのは、ちょっと珍しい、ヨットやボートなどに装備する液体充填海洋コンパスです。
常に故障と誤差がつきまとう通常のコンパスを改善するべく、その要因となる振動や摩擦を軽減させるため、米海軍の依頼を受けた米国の物理学者 Edward Samuel Ritchie が、1861年ついに史上初の液体充填コンパスを完成させました。
以後、改良を加えながら米海軍や船舶へと普及していきました。
海上を航行する船舶が自船の位置や進行方向を得るための手段として、現代ではGPSが主流ですが、潮の影響を受けると進行方向と船首方向が一致するとは限らないので、多くの船舶は船首方向を求めるための方位センサーとして、ジャイロコンパス、または、液体充填磁気コンパスを搭載しています。
針を含むケース内を液体で満たしたコンパスは、針が動く際に液体の抵抗を受けるためブレがなくスムーズに動作し動作収束も早いため、扱いやすいのが特徴ですが、この液体についてはその製造元、年代によって種類は様々です。
無色透明の鉱物油という理解が一般的ですが、初期の1860年代のものはアルコールと水の混合液が使われていて、いわゆる専用のコンパスオイルは、1940年代まで一般的に使用されなかったようです。
アルコールと水の混合液は1960年頃にはほぼ使われなくなり、代わって、無臭のミネラルスピリッツ(100%パラフィンベース)や、同様の特性を持つイソパールLと呼ばれる液体などが使用されるのですが、製造メーカーによって充填液は様々、その詳細は企業秘密といわれています。
漏れてしまった液体を再充填するため、市販の無香料ベビーオイルで代用することも可能ですが、元の液体と混ぜることはNGだとか。
さて、今回のコンパスに話しを戻しましょう。
円板面と側面に、SUUNTO Co. Made in Finland の表示。
フィンランドのヴァンタアに本社を置く「Suunto/スウント」は、1936年に設立され、スポーツウォッチ、ダイブコンピュータ、コンパスなどを扱う精密機器メーカーです。
創設者であるフィンランドの冒険家 Tuomas Vohlonen トーマス・ヴォホロネンは、独自のアイデアで、安定性と精度の高い針を使用した液体封入式コンパスを発明し、後に、軽量コンパクトで手首に簡単に装着できるリストマウントの携帯用液体コンパスを量産し、フィンランド陸軍にも採用されました。
スウントの軍事コンパスは、フィンランド軍をはじめ、英国陸軍、カナダ陸軍およびいくつかの米特殊部隊を含む様々なNATO軍など、長年にわたって使用されています。
このような様々の独自技術を持つスウントの液体充填海洋コンパス。
無色透明な液体で満たされたドームの中は、気泡がまったく無いので、見ただけではそこに液体の存在は感じられません。
ただ、何度も何度も傾けたり回転させても、円板はゆったりと水平を保とうとしながら的確に北を指し、そして安定する様こそが、磁気コンパスを理想的に動作させるため先人たちが追及してきた成果なのだと実感します。
大航海時代に未開の地を目指す帆船か、あるいは、地中海の波に揺られるヨットの上などをイメージしつつ、ゆらゆらと浮遊する円板を眺めてみてはいかがでしょうか。
◆Finland
◆推定製造年:c.1960年代頃
◆素材:金属、樹脂、他
◆サイズ:直径約10.5cm 高さ約5.7㎝
◆重量:258g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に微細な傷や汚れがみられますが、目立つ傷はなく、とても良い状態です。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A