英国アンティーク、アールヌーヴォーのテーブルベル。
英国の南部、有名な競馬場で行われていたアンティークフェア。
沢山のストールが並ぶなかで、上品な白髪をもつふくよかな親爺殿から譲っていただいたベルをご紹介いたします。
変わったフォルムが気になって、断りをいれつつ、棚からベルを取り出した私に向かって説明する親爺殿。「いいベルだ。アールヌーヴォーのものだね。」
英国においてアールヌーヴォーは、なかなか微妙な装飾芸術。そもそもアールヌーヴォーの始まりは、1880年代に詩人ウィリアム・モリスらが唱えた「アーツ&クラフツ運動」が始まりと言われています。それが大陸へと渡り、世紀末にかけてアールヌーヴォーとして花開いた・・・というのが通説。フランスやオーストリア、ベルギーなどの曲線的で優美な建築や家具、照明器具などが代表的と言われています
では英国では?
正直、ウィリアム・モリスの作品をみて「アールヌーヴォー」を連想する人は少ないかと思います。本の装丁などはネオクラシカル風、家具や建築などは直線的、幾何学的構造が多く、アールヌーヴォーの曲線を感じさせるものはテキスタイルデザイン等くらいかもしれません。
例えば家具において英国で「アールヌーヴォー」とよばれるものは、1900年代から1910年頃にかけて作られました。装飾の逆輸入のような形で大陸からの流行がはいりつつ、もとからあったアーツ&クラフツと融合し、やや幾何学的な構造をもつものがほとんどです。わずかに一部平面的な象嵌やガラス部分などは植物のモチーフが多く取り入れられ、大陸の華やかさを感じさせています。そして建築において、英国でアールヌーヴォー様式とよべるものは、ほぼ無いと言ってよいのではないでしょうか。
ただ、小物などの装飾雑貨においては、アールヌーヴォーは取り入れられ、多くのものをみることができます。そう、例えばこのベルのような。
そんな背景をもって、このベルを見てみましょう。
一見してシックな黒っぽい色。でも目を凝らせば、驚くほど豊かな装飾に満ちていることがわかります。
まず、キャスティング全体には凝った装飾が施されています。エッジにはフルールドリスや蕾を思わせるふくらみ。上部にはスクロールと組み合わされた優美な曲線。それらを繋ぐように、連続した円弧がレース文様のように全体を覆っています。持ち手先端にはほんのりと首を垂れた小さな蕾。今にもゆっくりと立ち上がり、花を開かせるような予感に満ちています。
大きさは小ぶりで、黒い色からしてアイアンかとも思いましたが、キャスティング内側をみれば、どうやら真鍮製のようで、外側に黒い塗装を施したのではないかと思われます。
振り子(クラッパー)は撚った針金で吊るされており、後年やりかえられたものと思われます。鳴らす際に特に支障はないので、このままのご紹介とさせていただきます。
振ればきれいな音色が響きます。
動画をアップいたしましたので、よろしければご確認ください。
深く何層にも渡る英国の装飾芸術のなかに、するりと入り込んだアールヌーヴォーの小物たち。
きらりと光る宝石のような美の結晶を、どうぞお手元でご堪能ください。
◆England
◆推定製造年代:c.1900年代頃
◆素材:おそらく真鍮・金属
◆サイズ:直径約6.9cm 高さ約10.4cm
◆重量:163g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A