フランス・アンティーク、手斧と女性モチーフのブローチ。
今回ご紹介するのはフランスからの小さなブローチ。
よく見れば、少し謎めいたモチーフが盛り込まれています。
まず特徴的なのは女性の衣装。
大きな大きなリボンのようなものを被っています。
これは、「コワフ/coiffe」という帽子で、フランス・アルザス地方の民族衣装。
これに「コルレット/飾り襟」がついた白いリネン製のシュミーズ、赤いスカートに刺繍が入ったエプロンをつけるのが特徴。肌寒い時にはこれにショールを羽織って出来上がりです。
女性の左側にはイチゴのような果物と文字が見えます。
イチゴはアルザス地方でもよく収穫されますので、その関係かと思いますが、文字はどうやらラテン語で読むことはできませんでした。
そして、さらに目を惹くのが「手斧/Hachette」。
物騒な武具がなぜアルザスの民族衣装を着た女性と一緒に在るのか・・・?
少し話がそれますが、フランスにおいて「斧」「女性」が意味するものは、15世紀の女傑「ジャンヌ・アシェット/Jeanne Hachette」が有名です。
フランス北部の町ボーヴェの職人の娘であり、本名は「Jeanne Laisne」。
1472年、町がシャルル公のブルゴーニュ軍に攻囲された際に「斧/アシェット」を手にしたジャンヌが女性たちの先頭に立ち、敵軍を打ち破って軍旗を奪ったという逸話が残っています。
・・・なんてたくましい!
かのジャンヌ・ダルク(1412-1431)を思い起こさせる働きぶりは人々の記憶に残り、ボーヴェにはジャンヌ・アシェットの銅像が建てられているそうです。
さて、今回ご紹介するブローチ。
女性の衣装からして、やはりアルザス地方に由来する品物であろうかと思います。
アルザス地方はかつてフランク王国のはざまにあって何度も戦争の被害にあってきました。
現在はフランスに属しますが、ドイツ国境に接しており、首府ストラスブールは19世紀の後半以降、普仏戦争、第1次世界大戦、第2次世界大戦と、戦争が起きるたびに、フランスとドイツとの領土争いに巻き込まれ、80年たらずの間に4回も国境線が変わりました。
そんな激動の歴史をもつアルザスにおいて、女性たちもまた戦う必要があったことは想像に難くありません。
この民族衣装を着た女性と手斧のモチーフは、アルザスの誇りにかけて、かつてのジャンヌ・アシェットのように戦う決意を表しているのではないかと思えて参りました。
作られた年代は19世紀後半から第二次大戦までの期間なのではないかと推測いたします。
小さいながらも精密なつくりは、独特の存在感をはなち、見る者の心を捉える、特別なひとしな。
ストーリーを推測し、想いを馳せずにはいられない、アンティーク・アクセサリーの佳品を是非ご鑑賞ください。
◆France
◆推定製造年代:c.19世紀後半から1940年代頃
◆素材:金属
◆サイズ:約2.5×2.5cm
◆重量:2g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*ブローチ留め金具は、ご使用可能と判断してご紹介しておりますが現代の物に比べればわずかに操作性に劣ります。
*針先は鋭いです。お取り扱いには十分ご注意ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A