英国アンティーク、豆本の祈祷書。
豆本。
英語では「Miniature Book」とよばれ、文字通り小さな豆粒のような本のことをいいます。
豆本とよばれることへの厳密な決まりはありませんが、ヨーロッパではおおむね3インチ(7.62cm)以下のものをそう呼び、16世紀頃には聖書を中心に豆本が盛んに作られたようです。小さな文字をきちんと印刷する技術、それに対応する紙の開発、そして製本技術と、豆本には様々な技術がつまっており、各出版社がしのぎを削るアイテムだったことは想像に難くありません。
さて、今回ご紹介するのは、そのなかの一冊。
掌に納まる小さな本。装丁は黒に近いブラウンのレザーで、タイトルは箔押しで「Common Prayer」(祈祷書)となっています。
出版はオックスフォード・ユニバーシティ・プレス、印刷は CHARLES COURTIER & SONS Ltd.。
年代は明記されていないのですが、オックスフォード・ユニバーシティ・プレスのシールドのマークが1893年発刊の他の本のものととても似ていること、そしてCHARLES COURTIER & SONS Ltd.印刷の本は主として19世紀後半の聖書が古書市場やコレクションに多いこと、そして見返しの書き込みが1911年となっていることから、19世紀後半から1911年まで、つまりヴィクトリアン後期からエドワーディアンのものであることが推測できます。
ややご紹介が前後しましたが、見返しには書き込みがみられます。
まず1枚目は以下の通り。(手書きなので解読には推測も混じっています)
Loly Porteous
Stockton
1911
「Stockton」とはおそらく「Stockton-on-Tees」のこと。イングランド北東部ダラム州にある町の名前です。「Loly Porteous」は個人名でしょう。この人が1911年にこの本を手に入れたのではないかと思います。
そして2枚目。
Overcome evil
with good
with love
M.A.G
この「Overcome evil with good」とは、聖書の「ローマ人への手紙12章21節」からの言葉。「善をもって悪に打ち勝て」という意味となります。
原文
Do not be overcome by evil, but overcome evil with good.
邦訳
悪に負けてはいけません。かえって、善をもって悪に打ち勝ちなさい。
そこに「M.A.G」から愛と共にこの言葉を添えて、誰かに贈られたのではないかと思います。それがこの本自体なのか、何かの記念に言葉だけが書き込まれたのか・・・。
全ては推測の域を出ませんが、これらの書き込みは、かつてこの豆本がどんな人たちの間で、どんな想いと共に在ったのかを想像する、大切な手掛かりのような気がいたします。
100年を超えて受け継がれた小さな小さな祈祷書。
貴方の心の御守りとして、書棚のマスコットとして、いかがでしょうか。
◆England
◆推定製造年代:c.19世紀後半から1911年
◆素材:紙、レザー
◆サイズ:約4.7×5.5cm 厚み約1.3cm
◆重量:22g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、傷みや変色、書き込みがみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A