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Friday

ヴィクトリア時代、最高級の一杖 / Antique Victorian Walking Stick with Sterling Silver Grip by BRIGG

 英国アンティーク、BRIGGのウォーキングステッキ。





















英国の大きなグラウンドで行われるアンティークフェア。


その日はあいにく天気が悪く(英国としてはあたりまえですが)、入場する頃には横殴りの雨が降っていました。



傘とレインコートをもってしてもあまりにつらく、思わず飛び込んだテントの中。そこは一見して趣味が良い品物が多く、上品な英国のアンティーク、そしてフランスやドイツなどのアンティークを集めたこだわりのディーラーのテントでした。明るい髪色のレディと貫禄たっぷりのミスターは、風でバタバタするテントの中、沢山の品物を守るように、テントの布を抑えながら立ちすくんでいました。


そこで私たちは何本かのステッキを手に入れることになります。それはそれぞれに特徴ある、唯一無二の品物ばかりでした。


今回はご紹介するのはそのうちのひとつ。たっぷりとしたお腹が印象的な髭面のミスターが、顔を紅潮させながらおすすめしてくれたヴィクトリア時代の1本です。


メーカー名は「BRIGG/ブリッグ(ブリクとも表示できます)」。

「アンティークのステッキを扱うなら、BRIGGは知っておかなければいけない。とにかく最高の品だからね!」


彼の圧を感じながらステッキを手に取れば、なるほど明らかに美しい品物でした。スターリングシルバーのグリップは凝った加工が施されており、お揃いに誂えられた石突(フェルール)も凝っています。アンティークステッキの石突は大抵が真鍮と鉛でできていて、ヒールの底のように、減るたびに取り換えられていたものですが、この石突は専門店でないと対応できない完成度で、さぞ余裕とこだわりがある人が持っていたことを想像させます。グリップのデザインはエレガントですが、長さは93cm超えと長めなので、背の高い紳士であった可能性が高いと思われます。


ホールマークは1886年ロンドン。130年以上が経過したとは思えないコンディションの良さに驚きます。

シャフトには特殊な塗装が施されていて、本来の地が判別できず断言は出来ないのですが、この軽さと髭面のミスターからの情報により、恐らくはマラッカ藤と思われます。軽く強いマラッカ藤は最高級の傘や杖のシャフトとして定番の材。大抵は円筒をベースにわずかに尖った断面を持っていますが、このシャフトにその尖りは感じることができません。なるべく尖った部分がないところを選んで作ったのかな、などと想像いたします。



さてここで、「BRIGG/ブリッグ」についての説明を少しだけ。


正式名称は「Thomas Brigg & Sons」。もともとはトーマスの父親であるチャールズ・ブリッグが羽毛製造業者としてロンドン・ワーウィックストリートで商売をしていましたが、1828年、息子であるトーマス・エドワード・ブリッグが、ロンドンのセント・ジェームズ・ストリート23番地に別の店舗をオープンします。1828年の新聞広告によれば、傘の販売と修理を事業に加えたこととなっています。


1836年には地図会社がセント・ジェームズ・ストリートの地図に「ブリッグ=傘、ステッキ、鞭メーカー」として表示されることとなり、1852年までには会社名をThomas Brigg & Sonsとし、従業員を抱えるようになります。


1884年、ビクトリア女王の傘職人として最初の王室御用達を授与。1899年、同社はパリのオペラ座33番地にショールームを開設し、大陸市場に参入しました。この店は大層成功をおさめ、各国の王侯貴族が多く訪れたといいます。1908年、ロンドンで開催された仏英博覧会では、傘部門でグランプリを受賞。


恐らくこの頃が、会社として一番勢いがあった頃でしょう。

そして当時の広告などを見ると、基本的には傘メインの販売で、ステッキはそれほど多くなかったか、オーダー対応だったように思えます。


第二次世界大戦中フランスが占領された際に、ブリッグはパリの店を失います。1943年には「Swaine&Adeney/スウェイン&アドニー(1750年創業、馬具メーカーから始まり皮革製品全般を扱う)」と合併。現在は「Swaine/スウェイン」の名のもと、最高級の傘を提供し続けています。


オフィシャルサイト

https://swaine.london/



なお、現在もこのオフィシャルサイトではステッキは見当たりません。

サイトに載っていないだけなのか、完全オーダー製なのかは不明ですが、簡単に手に入るものではないことは確かだと思います。


ちなみにグリップ部分、スターリングシルバーのホールマークのうちの一つは「T.J」のメーカーズマークが判別できます。これはロンドンのシルバースミス、Thomas Johnson IIのもの思われます。恐らくブリッグの依頼のもと、シルバーパーツを請け負っていたのではないでしょうか。


全体的なコンディションの良さを見れば、あまり使わずに大切にされてきたことは想像に難くありません。フォーマルなウェアに身を包む、特別なシーンに、嬉し気にこのステッキを取り出す英国紳士が目に浮かびます。


そのとっておきの一本は、是非貴方のお手元に。

130年の時を超えて、ヴィクトリア時代の最高級ステッキをお届けいたします。



◆England/London

◆BRIGG(Thomas Brigg & Sons)

◆Thomas Johnson II

◆推定製造年代:c.1886年

◆素材:スターリングシルバー、マラッカ籐(おそらく)

◆サイズ:長さ約93.3cm グリップ直径約3.1cm

◆重量:167g

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。





アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A