英国アンティーク、折りたたみ式フットゲージ。
英国の小さな町で行われていたアンティークフェア。
市民ホールで時折行われるそのフェアは、出店者が少ないながらも良い品物が多く、スケジュールが合えば必ず訪れるフェアです。今回はその出店者のなかでも、格別に品の良いおばあ様からのお品物をご紹介いたしましょう。
細々した様々な物を並べたテーブルの周りは人だかりがしていて、特に人気のある方だとすぐにわかりました。並んでいる品々も選りすぐりで、おばあ様は優しくおしゃべり好き。これは人気にならない方がおかしい、というものです。
そこで私たちは何点かの品物を手に入れたのですが、これはそのうちのひとつ。見たことが無い少し変わった定規で、思わず手に取ると、おばあさまはにっこり笑って説明してくれました。
「フットゲージね。ヴィクトリアンのものよ。ほら、こうして・・・広げて使うの。ここにメーカー名もあるのよ。」
よく見れば、以下の文字が刻まれています。
F.B.COX MAKER
WARRANTED BEST BOX
「F.B.COX」はメーカー名。そして「WARRANTED」は「保証された」の意味、「BEST BOX」は「最高のボックスウッド」でしょう。「F.B.COXによって、最高のボックスウッドで作られたことを保証します・・・」的な意味かと思われます。
F.B.COXについて調べましたが、定規メーカーとして有名なRaboneほどの情報はありません。ただ、本拠地はバーミンガムであり、「F.B.COX」は「FRANCIS BLAKEMORE COX」の略であることがわかりました。設立は18世紀末とも、19世紀初頭ともいわれておりはっきりしませんが、象牙やボックスウッドなどを使用した、ちょっと特別な定規を作っていたようです。
1835年バーミンガムのインダストリアルリスト、RULE MAKERSの項目に、「Cox F. B. 50, Camden st.」がありますので、1835年、F.B.COXがバーミンガムのカムデンストリート50番地にあったことは間違いないと思われます。
Grace's Guide to British Industrial History
1835 Directory of Birmingham
https://www.gracesguide.co.uk/1835_Directory_of_Birmingham
使い方としては、まずたたまれた定規を開き、ゲージの役割をする部分を立て、その間に対象物を入れて測る・・・という仕組み。ゲージは特殊なサイズで、センチでもインチでもありません。
金物の継ぎ目までの目盛りは11まで、その先は少し離れてまた1から始まり、14まで目盛りがあります。英国において子供用靴サイズは大体11まで（日本でいうサイズ18）となっておりますので、11までは子供用、それより大きい場合は大人用という事かと思います。なお、裏側には通常のインチ目盛りが振られておりますので、一般的なインチ定規としてもご使用いただけます。
立ち上がり部分2本のテーパーが上下に上手く重なる納まり、順番をきちんと守らないと上手くたためない考え抜かれた仕組み。道具好きにはたまらないアイテムといえるでしょう。
そして、アンティークのボックスウッドアイテムは色々見てきましたが、ここまでの色味になったものをみたことは初めてです。ボックスウッドはもともとは白木調の明るい色味のはずですが、このフットゲージは深い飴色になっており、ボックスウッドのというよりはウォールナットの雰囲気をもっています。「WARRANTED BEST BOX」の文字が無かったら、「英国アンティークの定規は原則ボックスウッド」ということを知っていても、材の特定に迷ったと思います。
折りたたみ式、ということで、おそらくは携帯用。ヴィクトリアンの靴屋が、お客様先に出向き、その場でサイズを測る時に使用していたのではないでしょうか。いったいどれほど使い込んだら、ボックスウッドがこんな色味になるのか・・・。
時間と人の手が作り上げた結晶体のような、英国アンティークの類まれな逸品。
是非お手元で、職人のこだわりが詰まった道具の美しさをご堪能ください。
◆England
◆F.B.COX
◆推定製造年代:c.1830-1860年頃
◆素材：木（ボックスウッド）、真鍮
◆サイズ：幅約2.2cm 長さ約23.3～38.2cm
◆重量:90g
◆在庫数：1点のみ
【NOTE】
＊古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
＊画像の備品は付属しません。
＊上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d＋A
