英国アンテーク、インク壺とペントレイのデスクセット。
英国の小さな町で行われていたアンティークフェア。
市民ホールで時折行われるそのフェアは、出店者が少ないながらも良い品物が多く、スケジュールが合えば必ず訪れるフェアです。今回はその出店者のなかでも、格別に品の良いおばあ様からのお品物をご紹介いたしましょう。
細々した様々な物を並べたテーブルの周りは人だかりがしていて、特に人気のある方だとすぐにわかりました。並んでいる品々も選りすぐりで、おばあ様は優しくおしゃべり好き。これは人気にならない方がおかしい、というものです。
可愛らしい上品さに魅かれて私が手に取ったのは、薔薇モチーフが施されたデスクセット。
「それはヴィクトリアンのものよ。薔薇がラブリーでしょう。娘の品物だけど、今日は私が扱っているの」
娘さんもアンティークディーラーなのかな、と思うような発言をされていました。
基本的に英国のアンティーク屋は家族運営。大きなところは別だと思うのですが、中小のアンティーク屋さんはほとんど家族でやっているのではないでしょうか。子供は一時は他の仕事に就いても、途中で親を手伝うために家業に参加し、やがて継ぐ・・・そんなパターンが多いようです。
上品な薔薇の花に魅かれ(おばあ様の上品さにもやられて)手に入れてしまいました。
万年筆が普及する前、つけペンの時代には必需品だったインク壺。そのインク壺とペントレイをセットしたデスクセットは、ヴィクトリア時代にはなくてはならない物でした。
つねに目にするだけに、持ち主の嗜好が反映された様々なデスクセットがみられます。このデスクセットは、写実的な薔薇の花、そして緑色のエナメル仕上げを施された葉、というヴィクトリアンの意匠が施されています。そしてペントレイやインク壺支え部分の幾何学的な衣装は、アーツ&クラフツの影響が感じられます。
1880年代に端を発するアーツ&クラフツ運動は、詩人ウィリアム・モリス(1834-1896)を中心に大きな流れとなり、後にアールヌーボーへと引き継がれていきます。ウィリアム・モリスといえば「苺泥棒」などのテキスタイルを思い出される方もいらっしゃるかと思います。平面デザインのテキスタイルや本の装丁においては非常にデコラティブであるモリスのデザインですが、一方で立体造形としては比較的シンプルで幾何学的な家具などを多く残しています。アーツ&クラフツは、アールヌーボーの源流であり、その後のアールデコも感じさせるデザインの萌芽が詰まっているものであるといえます。
このデスクセットは、ヴィクトリアンの終わり頃、具象的なヴィクトリアンの意匠と当時流行りだしたアーツ&クラフツのデザインが融合された逸品であるといえるでしょう。
デスクのみならず、サイドボードやカウンターにおいて、小物入れとして。
インク壺はクリップなどをいれてみてもよろしいかもしれません。
もちろん、インクとつけペンをセットし、ヴィクトリア時代そのままに書き物を愉しんできてもよろしいのではないでしょうか。
美へのこだわりが詰まった、薔薇の花咲く可憐なデスクセット。
世紀を超えて貴方にお届けいたします。
◆England
◆推定製造年代:c.1880-1900年代頃
◆素材:真鍮、ガラス
◆サイズ(インク壺込):幅約15.3cm 奥行き約9.2cm 高さ約7cm
◆重量(インク壺込):191g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、歪み、補修跡等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*ガラスにヒビや欠けはみとめられません。
*画像のペン、及び備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d+A