英国アンティーク、オーク材のブックトラフ。
トラフ/Troughとは、「(細長い)飼葉おけ」「槽(ふね)」「くぼみ」や「谷」という英語。
そして、ブックトラフ/Book Troughとは、本を置く棚部分がV字谷のようになっていて、本を約45度傾けて収納するようになっている本棚のことをいいます。場所は少々とりますし、ハードカバーでないとしっかりと収納できない、というものではありますが、角度がついて出し入れしやすく、タイトルが見えやすい、というメリットがあります。
英国アンティークの小家具で、ブックトラフはひとつの定番。
素材は実用的なオークから、最高級のマホガニーや化粧張りのウォールナットまで、フォルムは1段だけでデスクトップに乗せるもの、2-3段程度で床に置くものから、1段のトラフの上に天板は水平なものをつけて、そこで本が開けるようになっているものなど様々なタイプがございます。
今回ご紹介するブックトラフはデスクトップ用のシンプルなもので、材はオークで出来ています。そして見逃せないのが、側板に取り付けられた銘板。
以下のように記されています。
MADE OF OLD OAK REMOVED
FROM THE BELFRY OF THE
CHURCH OF THE HOLY SEPULCHRE
NORTHAMPTON 1926
1926年
ノーザンプトン、
ホーリーセプルチャーの鐘楼から外された、
古いオークの木で製作された。
まず、ホーリーセプルチャーとは、日本語でいえば聖墳墓教会のこと。
オリジナルの聖墳墓教会は聖地エルサレムにあり、ゴルゴダの丘があった場所、イエス・キリストの墓とされる場所に建つ教会です。
もともとはローマ帝国皇帝コンスタンティヌス1世が325年頃に建設を命じた教会堂が始まりといわれています。その後戦争や焼失の歴史を経て、東ローマ皇帝コンスタンティノス9世モノマコスが1048年に小さな教会を再建。そしてそこが十字軍の遠征の最終目的地となります。1100年頃の聖墳墓教会は、中心となる丸い広間と高い天井をもつ空間があり、柱で区切られて周囲を歩けるようになっていたとされています。
一方で、ノーザンプトンの聖墳墓教会は1100年頃、ノーサンプトン伯爵の Simon de Senlis/サイモン・デ・センリスが建てたとされています。センリス伯爵は1096年頃に第一回十字軍に参加していますので、エルサレムの聖墳墓教会を見た可能性が高く、同じように丸く、そして周囲に柱をもつ聖墳墓教会を自らの治める地に作った、というのが有力な説となっています。
ノーザンプトンの聖墳墓教会はその後何年にもわたり増改築が繰り返され、現在の形となりました。現在においてはイングランドのグレードI指定建造物でありながら、教会として信者が日々集う場所となっています。
ということで、今回ご紹介するブックトラフは、ノーザンプトンの聖墳墓教会の鐘楼を構成していた古いオーク材から出来ている、ということです。
恐らく、増改築を行う際に撤去された材で作られたと思われます。
その材を有効利用するために、このような小物が作られ、記念のプレートがつけられ、信者に配られた、もしくは販売されのではないでしょうか。
プレートによれば、この材がブックトラフになったのが1926年。当然それよりもだいぶ昔に鐘楼を作ったでしょうから、もともとは一体何年前のものだったのでしょうか?150年200年は軽く経っているような気がします。
遥か十字軍の歴史から始まる教会建設、そしてそこから生まれる小さな木製品。
英国アンティークの醍醐味を凝縮したような稀有なひとしなを、貴方のお手元でご堪能ください。
◆England
◆推定製造年代:c.1926年
◆素材:オーク、真鍮
◆サイズ:幅約31.7cm 奥行き約18.5cm 高さ約11.2cm
◆重量:570g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、変色がみられます。
*一部材が割れて釘が見えてる場所があります。通常のご使用では問題ない範囲と思います。修理するのに外してしまうよりは、このままのご紹介とさせていただきます。
*材は僅かに反りがみられます。
*平滑面に置くとごくごくわずかにカタつきますが、気にならない範囲かと思います。気にされる方は布を敷く、接地面にフェルトを貼る等されることをおすすめいたします。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A