フランスアンティーク、シルバーのグリップを持つステッキ。
英国の大きなグラウンドで行われるアンティークフェア。
その日はあいにく天気が悪く(英国としてはあたりまえですが)、入場する頃には横殴りの雨が降っていました。
傘とレインコートをもってしてもあまりにつらく、思わず飛び込んだテントの中。そこは一見して趣味が良い品物が多く、上品な英国のアンティーク、そしてフランスやドイツなどのアンティークを集めたこだわりのディーラーのテントでした。明るい髪色のレディと貫禄たっぷりのミスターは、風でバタバタするテントの中、沢山の品物を守るように、テントの布を抑えながら立ちすくんでいました。
そこで私たちは何本かのステッキを手に入れることになります。それはそれぞれに特徴ある、唯一無二の品物ばかりでした。
今回はご紹介するのはそのうちの二本目。レディが自信をもっておすすめしてくれた、19世紀フランスの1本です。
まず、シャフトはエボナイズド仕上げ。
「エボナイズド」仕上げとは、英国やフランスのアンティーク家具などでもみられる黒い塗装仕上げのこと。エボニーとは黒檀のことで、黒檀のように仕上げることをエボナイズドとよびます。遥か東洋からやってきた黒檀の装飾品に驚嘆した、かつての富裕層やキャビネットメーカーが生み出した仕上げのひとつであり、エボナイズド仕上げに黄金色のオルモルを合わせたり、セーブルの陶板をはめ込んだりしたキャビネットは、最高級品として英国やフランスの王侯貴族たちに愛されてきました。
その仕上げが施された木部は、部分により塗装が剥がれ、暗茶色の杢目が出ている部分があり、それがまた一つの景色となってよい風情をだしております。木材の特定はできませんが、体重をかければわずかにしなり、それほどの重さは無い木です。
次に、ハンドル部分を見ていきましょう。
フォルムとしては大曲(Crook Handle)で、手に引っかけられるようになっています。
仕上げは見事な彫刻が施されたシルバー。意匠はロココ風で、アカンサスのスクロール、小花模様、そしてレース風の格子模様などが巧みに組み合わされ、立体彫刻のようにハンドルに配された様は見惚れるばかり。凹凸のある表面仕上げは、持った時に心地良く手になじみ、滑り止めの役割も果たしてくれそうです。
また、シルバーですが、英国のホールマークに対しフランスでのシルバーは、ミネルバの像やイノシシ、カニなどの刻印が押されます。ただ、英国ほどの厳格な管理ではなく、年代や場所などもはっきりとわかならいことが多くあります。こちらのハンドルもイノシシらしき刻印があるのですが、既にだいぶ潰れてはっきりとした判別は難しい状態です。販売していたディーラーの言葉と、当店の判断により、シルバーとしてご紹介させていただきます。
また、通常、古いステッキは石突部分に真鍮等で出来た金属カバーがついておりますが、多くのアンティークステッキは場合はすり減ったり取れてしまった状態となっています。それは金属カバー部分は簡易な釘で留めてあり「すり減ったら替える」前提で作られているため、それほどの耐久性を求めていなかったためと考えられます。
今回ご紹介するステッキの金属カバーも、買い付け時には既に外れた状態となっておりました。当店の方で、現行品のステッキ用ゴムキャップを嵌めました。このままご使用いただけますし、ご不要の場合は、すぐに外すことも可能です。
英国はもちろん、フランスにおいても紳士の必需品であったステッキ。
フランスを代表する詩人ボードレール(1821-1867)の作品においても多くの記述があり、「ステッキなしで出かけるのはまるで丸裸で出かけているようなものだ」との描写もあります。
19世紀末、お洒落なフランス紳士が愛好したであろう美しき一本。
18世紀ロココの夢の残滓のような銀細工と共に、貴方にお届けいたします。
◆France
◆推定製造年代:c.1880-1900年代頃
◆素材:グリップ/シルバー シャフト/木(エボナイズド)
◆サイズ:長さ約87.5cm グリップ幅約11cm
◆重量:225g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、塗装の剥げや変色、材の傷みなどがみられます。
*シルバーハンドル部分には、わずかにダメージがみられます。ほとんど目立たず気になりませんが、詳細は画像にてご確認ください。
*持ち主の癖かもしれませんが、グリップ部分にわずかにねじれがあります。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A