ドイツアンティーク、ケース入り直角プリズム。
今回は知的好奇心がくすぐられる、約1世紀前のドイツ製光学器具をご紹介します。
太陽の光をプリズム(山稜鏡)に通すと「虹」が現れる・・・そんな理科の実験などが思い起こされますが、今回ご紹介する器具もプリズム単体であれば「虹」のような現象も確認できます。
本来、虹の実験で使われるのは、断面が正三角形の「三角プリズム」で、太陽光線のようなさまざまな波長の光線を通すと、中で光が屈折して綺麗な色の帯が観察できます。
一方、今回のものは「直角プリズム/Right Angle Prism」と呼ばれ、断面が直角二等辺三角形となります。これは、「虹プリズム」としての用途よりも、光を屈折させ90度または180度変えるために使用されるもので、その反射率は鏡の95%程度に対し、プリズムはほぼ100%といわれています。その特性から、現代でも顕微鏡や内視鏡などの医療機器、双眼鏡、半導体製造装置、または撮影レンズや照明ファイバーなどに近接させて使われています。
さらに、この極めてシンプルで、かつ興味深い器具を詳しく見てみましょう。
直角プリズムの二辺以外、ミラーコートされた斜辺面と上下面はコの字に折り曲げられた三角形の金属でカバーされ、ハンドルが設けられています。このミラーコートされた斜辺面を利用して、プリズムの一方の面から入射したビーム/光を90度全反射させるのに使用されます。その時、像の左右は反転します。
この器具がどのような目的で製造されたものかはわかりませんが、恐らく、直角プリズムの特性を利用しての観察か、実験補助的な用途で使われていたのかもしれません。
黒く塗られた金属カバーの背面には、「Busch/ブッシュ」と書かれた会社のロゴと、メーカーのマークが印象的です。
ドイツのベルリンで生まれた Emil Busch/エミル・ブッシュ(1820-1888)は、写真の分野において、特にカメラレンズの先駆的な仕事をしたことで有名です。1845年に、叔父のJohann Heinrich August Duncker/ヨハン・ハインリッヒ・アウグスト・ダンカーの科学機器事業を継承したブッシュは、技術はもとより商売人としての訓練や経験を積んで事業を拡大させ、軍用光学機器なども手掛けました。
1852年、ドイツのラテノウ/Rathenow にある彼の会社/The Busch-Rathenow Company は、カメラの製造を始め、1865年に新しく開発した広角レンズ「Pantoskop」の特許を取得し、写真製品部門で賞を受賞しました。その頃、Carl Zeiss AG / カール・ツァイスAG とも強力な関係を築き、市場をほぼ独占していたと言われています。
同社は時代とともに変化し、その名前は Optische Anstalt Rathenow となり、1872年、Emil Busch AG / エミル・ブッシュAG として株式市場に上場しました。
カール・ツァイスとの強い関係は1920年代後半まで続き、1927年、カール・ツァイスが過半数の株主となり、ブッシュはカメラの製造を続けましたが、レンズの製造は中止しました。
プリズム背面の特徴的なロゴから、この製品は1900年代の初頭に製造されたものと思われます。
カメラレンズの先駆者として名高い、エミル・ブッシュAG の直角プリズム。貴方のコレクションに加えてみてはいかがでしょうか。
◆Germany
◆推定製造年:c.1900-1920年頃
◆素材:金属、光学ガラス
◆本体サイズ :幅約4.2cm 奥行約2.4㎝ 長さ約7.8cm
◆プリズムサイズ:斜辺約4.1cm 二辺約2.9㎝ 厚さ約1.3cm
◆ケースサイズ :幅約9.2cm 奥行約5.6㎝ 高さ約3.2cm
◆重量:56g/104g(ケース込み)
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、金属部の経年変化やミラー背面の僅かな錆等がみられますが、とても良い状態です。
*ケースの表面及び内張りにも経年による傷や摩耗などが見受けられますが、丁番や留め具は正常に動作します。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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Todd Lowrey Antiques
by d+A