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Saturday

1インチの世界をカウントする/ Antique Cased Brass Textile Thread Counter Magnifying Glass

 英国アンティーク、ケース入りスレッドカウンター。




























四角いケースにきっちりと納まった、複雑なパーツで構成された光学機器。

それは、生地のスレッド数、すなわち、平方インチ内で一緒に織られた糸の数をカウントするための顕微鏡/拡大鏡です。


この機能を有するものは、Linen Tester/リネンテスター と称する折りたたみ式の置き型拡大鏡として現代にもあって、拡げるとコの字型になり、生地の上に直接置いて、1㎝角の正方形の穴から見える生地の状態を円型のレンズから覗き込むかたちが最も一般的です。


リネンテスターの原形は19世紀から登場し、1840年頃の当時のカタログには「 Pillar Type Linen Prover 」と称する、2本の小さな柱で支える最もシンプルな初期のリネン検定器/検査器や、折りたたみ式のモデルも既に掲載されていました。


初期のモデルは、生地に直接触れるベース部分に直径5㎜弱の丸穴が空いていましたが、その後、1/4インチ、1/2インチ角の開口がスタンダードになり、さらに開口部の四方に目盛りが刻まれるなど改良が重ねられながら現在に至ります。



今回のモデルは、20世紀初頭から登場した、標準的な開口部のない Thread Counter/スレッドカウンター と呼ばれるタイプです。 



真鍮のベースに刻まれた、J.CASARTELLI & SON  SALFORD.6  RD.14755 の表示。 

J.CASARTELLI & SON はメーカー名、SALFORD は、18世紀と19世紀に綿と絹の紡績と織物工場の町として栄えた英国マンチェスターの近郊に在る町で、RD.14755 は製造番号と思われます。


創業者の Guiseppe Luigi Casartelli/ギセッペ・ルイジ・カサルテッリは、1834年、11歳で家族と共にイタリアから英国リバプールに移住し、バロメーターと温度計を製造するビジネスに参加しました。後に Joseph Louis Casartelli/ジョセフ・ルイ・カサルテッリ と改名、1851年にマンチェスターへ移り住み、義理の兄弟から精密機器の製造事業を購入すると、望遠鏡や顕微鏡、カメラに至る光学機器など、様々な機器の設計を改善し、事業を拡大しました。


次男の Joseph Henry/ジョセフ・ヘンリー が、1882年頃から父親のもとで働くようになり、1892年には会社名を「J. Casartelli and Son」とします。1900年に父親が他界した後も、ジョセフ・ヘンリーによって事業は継続されます。


1929年にはリバプールのルイ・カサルテッリの事業も引き継ぎましたが、1933年の大恐慌の間に清算され、残りの会社は、1966年までカサルテッリの名前で測量とテキスタイル試験装置を製造、販売し続けました。



さて、本体の機能についてですが、ソリッドの真鍮で組まれたボディはずしりと重く、ベース部分長手の両サイドにはシルバー色の2つのスケールがあり、片方は、5㎜、6㎜、10㎜ の3つの幅のミリメートルと、37/200インチ幅の目盛り、もう片方は1/4インチ刻みで1インチ幅の目盛りが刻まれています。


リードスクリューを回転させると、レンズを背負ったシリンダー形状のキャリッジが左右に水平移動し、そのシリンダーの中芯から上下に伸びた金属の鋭いピンも、上下のスケール上で、同時に移動します。


レンズはキャリッジを中芯軸に回転するので、他方の側のスケールへ旋回させることができます。レンズ部分のみ上下させて焦点を合わせることも出来、上方へ引っ張り上げてレンズ部分のみ取り外すことも可能です。


スケール上のピンを、真上からレンズを通して覗き込みながら、リードスクリューを回転させ、ピンを移動させながら生地のスレッド数をカウントするなどして使用します。


ベースを裏返すと、4つの小さな丸穴があるのですが、それら4つの穴には、使用している間の生地の動きを防ぐために、金属の小さなピンが存在していたと思われます。



ケースの表面は、シボ加工された黒い素材で覆われ、内部は本体形状に合わせてベルベッドの内張りが施されています。経年によって、角などに剥がれが見受けられ、丁番に若干の緩みもありますが、蓋の開閉に支障はなく、留め具もしっかり機能しています。そのケースの中で守られてきたこのスレッドカウンターは、真鍮の輝きも褪せることなく、レンズも含めとても良いコンディションです。


試しに衣類などの上に置いて覗いてみると、糸が1本1本編み込まれた様子が拡大され、顕微鏡のように肉眼では見えない世界に感動さえ覚えます。



亜麻植物から作られたリネン生地は、何世紀にもわたってテーブルクロス、ベッドカバー、衣類等に使用されてきました。亜麻糸は弾性がないため、糸を壊さずに織り込む困難さが、綿よりも製造に大幅なコストを要すほど、今日、リネンは通常比較的少量で生産される高価な織物です。


そのような操作の難しい亜麻糸の監理に活躍したであろう、ヴィクトリア朝から在るリネン検査器やスレッドカウンター。


安定して設置でき、対象物を拡大しつつ、スライドできる便利さは、他の物の観察にも非常に有効にお使いいただけると思います。


古代から続くリネン織物へのこだわりに思いをはせつつ、丸穴から覗く世界を愉しまれてはいかがでしょうか。



◆England

◆推定製造年:c.1896-1920年代頃

◆素材:真鍮・ガラス・金属

◆本体サイズ:幅約7.8cm 奥行き約5.2cm 高さ約3.8cm レンズ部分直径約1.2cm

◆ケースサイズ:幅約9.5cm 奥行き約7.3cm 高さ約5.2cm

◆重量:288g、374g(ケース込)

◆在庫数:1点のみ



【NOTE】

*古いお品物ですので、一部に微細な傷や汚れ等がみられますが、レンズに目立つ傷はなく、とても良い状態です。

*詳細は画像にてご確認ください。

*構造上、ガイドのピンは鋭い形状をしています。お取り扱いにはご注意ください。

*画像の備品は付属しません。

*上記ご了承の上、お求めください。



アイテムのご購入はショップにてどうぞ。

こちらのバナーからご来店いただけます。

Todd Lowrey Antiques

by d+A