英国アンティーク、ディップペン。
英国の大きなアンティーク・フェア。
屋外の芝生には沢山のディーラーが軒を連ね、体育館のような大きな建物の中には小さな物を扱うディーラーがぎっしり詰まっているところ。
その中の一角、筆記用具ばかりを扱う小さなコーナーには、白髪のお爺様とおばあ様がおりました。
何やら昔話のようになってしまいましたが、今回ご紹介するディップ・ペンはそのお爺様から買い付けた物。
とにかく一つ何か手に取ると、彼は山のような情報を喋るので、聞き取れなかったり覚えられなかったりで、自分の耳と脳みその不出来を呪うばかりだったことを覚えています。
今回のディップペンは、その軸のなめらかな曲線に魅かれて手に取りました。
山ほど色々喋ってくれましたが、私が覚えているのは「ウィリアム・ミッチェル」「1910」そして「Very Nice」。
お値段はなかなかのモノでしたが、撮影用の小道具に良いかも、と手に入れてしまいました。
ホルダーには、以下の文字が刻まれています。
WILLIAM
MITCHELL'S
RESERVOIR HOLDER
ENGLAND
PEN TO PROJECT 1/8th IN
WILLIAM MITCHELL/ウィリアム・ミッチェルとは、1825年創業の英国のペンメーカー。
なんと200年近くたった現在でも、独自のブランドでペンを製造・販売しています。
参考までにオフィシャルサイトをご案内しておきます。(英語版)
https://williammitchellcalligraphy.co.uk/
主として用途はカリグラフィー。
装飾的な文字を主としてペンを使って書く、西洋版の書道のようなもの、といってよいかと思います。
そして「RESERVOIR」とは「貯蔵、蓄積」の意味。
つまり「インクを貯めておけるペンホルダー」ということです。
ペン先の裏側をよく見れば、まるで弁のようなものがあることがわかります。
これはペン先ではなくホルダー側に付属しており、この空間にインクを効果的に貯めておくことができるのです。
そしてペン先も同じWILLIAM MITCHELLのもの。
しっかりと嵌っており、外せるかとは思うのですが、今のところ外すことはしておりません。
このペン先がどのくらい使われてきたのかは不明。
正直、ペン先は消耗品であり、どのくらい書けるのかは気になるところです。
試しに少しだけインクで文字を書いてみました。
使用したインクは現行品のWinsor & Mewton 、NUT BROWNです。
ペン先はやや固め、細めで、少し力を入れると太いラインを書くことができます。
おろしたてとどのくらい書き心地が違うのかは不明ですが、個人的感想としてはまだご使用いただけるのではないかと思いました。
なお、「PEN TO PROJECT 1/8th IN 」についての意味は不明。
おそらくこのホルダーに嵌めることができるnib(ペン先)のサイズのことかとは思うのですが、確証は得られませんでした。
美しい紡錘形をした飴色のホルダー。
手に持てばすんなりと馴染み、昔から持っていたような気持ちになります。
金色のペン先は工業製品としての形を極め、ある種の美しさと完成度をもって心に迫ります。
必要なことはほとんどキーボードから情報として流れる時代。
手書きの文字は、かえって贅沢なものに思えます。
さらにディップペンは、手間もかかりインクが乾く時間も遅いというデメリットだらけ。
でもだからこそ、書道のように場と気持ちを整えて臨むひとつの創作活動といえるのかもしれません。
文字を書く贅沢を享受するために。是非使ってみていただきたい英国アンティークのひとしなです。
◆England
◆推定製造年代:c.1910年代頃
◆素材:木・金属
◆ペン先装着時サイズ:全長約18.5cm
◆重量:6g
◆在庫数:1点のみ
【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆や変色、歪み等がみられます。詳細は画像にてご確認ください。
*ペン先には使用感がございます。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
アイテムのご購入はショップにてどうぞ。
こちらのバナーからご来店いただけます。
Todd Lowrey Antiques
by d+A